前回、なぜ個人事業だけで続けずにマイクロ法人を作ったのかという意思決定プロセスを書いた。今回はその続きとして、法人形態として合同会社を選んだ理由と、実際にNogawa L.prince合同会社を設立する過程でつまずいた実務面を書く。
先に結論を書くと、株式会社と合同会社で最後まで悩んだわけではない。自分の事業構成(本業は個人事業のまま、複業の一部だけを法人に持たせる)を前提にすると、比較検討はかなり早い段階で合同会社に収束した。むしろ時間を食ったのは形態選びではなく、その後の設立実務のほうだった。
目次
株式会社との比較で残った論点は多くなかった
合同会社と株式会社の違いは調べればいくらでも出てくる。社会的信用、資金調達のしやすさ、意思決定の自由度、設立コスト、決算公告の要否——ここを一つずつ自分の状況に当てはめていった。
自分の場合、法人を作る目的は「複業の一部を事業体として切り分けたいから」であって、「外部から出資を受けて事業を急拡大したいから」ではなかった。株式会社が強みを持つ資金調達のしやすさは、今の自分の事業フェーズでは優先度が低い項目だった。一方で、設立費用(登録免許税が株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円という差)と、決算公告義務が合同会社にはないという点は、すきま時間で法人運営を回す自分にとって実務コストの差として効いてきた。
社会的信用の面で合同会社が不利という声もよく見るが、自分が想定していた取引の範囲(複業側での契約・銀行口座開設など)では、合同会社であることが障壁になった場面は今のところない。この評価はあくまで自分が扱っている事業規模・取引先の範囲での話であり、一般化できるものではないと思っている。
判断を後押ししたのは「代表社員」という肩書きの扱い
もう一つ、比較の中で地味に効いたのが役員の呼び方だった。株式会社なら「代表取締役」、合同会社なら「代表社員」になる。
複業の一部を法人化するとはいえ、自分の本業はあくまで個人事業のフリーランスエンジニア(FDE)としての活動だ。法人側の肩書きが前面に出すぎると、対外的に見たときに「本業と法人、結局どちらが主軸なのか」が伝わりにくくなる懸念があった。「代表社員」という言葉は「代表取締役」に比べて世間的な知名度は低いが、逆に言えば主張が強すぎない。本業を主軸に置きながら法人を運用するという自分のスタンスには、この控えめさがちょうど合っていた。
これは完全に感覚的な判断基準で、経営上の合理性を説明できる話ではない。それでも、複数の事業体を同時に名乗る立場になる以上、肩書きが与える印象は無視できない要素だった。
設立実務でつまずいた3点
形態の判断自体は早く終わったが、実際の設立実務では想定より時間を取られた。特につまずいた点を3つ挙げる。
- 定款の事業目的の書き方: 複業の一部だけを法人に持たせる構成のため、法人の事業目的に何を含めて何を含めないかの線引きに迷った。将来的に法人側に移す可能性がある事業まで先回りして書くか、今実際にやる事業だけに絞るかで、記載内容を何度か書き直した
- 資本金の決め方: 最低資本金制度がないため理論上は少額でも設立できるが、法人口座開設の審査や今後の運転資金を考えると、いくらに設定するかの相場感がつかみにくかった。最終的に資本金は10万円に設定したが、これが適正だったかは今も判断がつきかねている
- 法人設立後の口座開設の想定以上の時間: 登記自体はオンラインの手続きで数日〜数週間で完了したが、その後の法人口座開設で本人確認・事業内容の説明資料の準備に想定以上の時間がかかった。ネットバンク系・メガバンク系で審査の重さが違う印象を受け、複数行に同時申請するくらいの余裕を持っておけばよかったと後から思った
設立自体は「オンラインで完結する簡単な手続き」というイメージを事前に持っていたが、実際には登記そのものより、その前後の付随作業(定款の内容確定、口座開設)の方が時間を取られた。
定款や設立書類の作成サービスは、複数を比較した上で選んだ。最終的に使ったのはマネーフォワード クラウド会社設立で、定款の事業目的の書き方に迷った点についても、質問形式で入力していく画面のおかげで、ゼロから条文を書き起こすよりは進めやすかった実感がある。検討の過程では0円創業くんのような定款作成・登記申請の代行サービスも候補に挙げたが、自分の場合は普段からクラウド会計を使う前提だったので、会計ソフトと同じ系列のサービスに揃えた方が後々の運用が楽になると考え、そちらを選んだ。
まとめ
- 合同会社と株式会社の比較は、資金調達より事業の切り分けを優先する自分の目的では早期に合同会社へ収束した
- 「代表社員」という肩書きの控えめさが、本業を主軸に置く自分のスタンスに合っていた
- 設立実務でつまずいたのは、定款の事業目的の線引き、資本金の相場感、口座開設にかかる想定以上の時間の3点
- 登記手続き自体より、その前後の付随作業に時間を取られるという実感があった
次回は、個人事業と法人の間で実際にどう役割分担を決め、経理・口座を分けて運用しているかについて書く予定だ。