先に結論を書く。私が目指しているのは「サイドFIRE」ではなく、あえて名付けるなら「複業FIRE」だ。両者の違いは資産額の大小ではない。収入を1つの箱に依存させるか、複数の箱に分散させるかという設計思想の違いだ。この記事では、エンジニアという職業特性がこの選択にどう影響しているかを、実体験ベースで書く。

目次

サイドFIREと複業FIREは何が違うのか

一般的に語られる「サイドFIRE」は、資産運用の運用益に、パート・アルバイト・軽めの副業といった「本業ほど負荷のかからない労働」を組み合わせて生活費を賄う設計だ。ポイントは、労働の側が「補助輪」だという位置づけにある。資産が育つまでの繋ぎ、あるいは資産だけでは心もとない部分を埋める役割で、労働そのものを事業として育てる発想は薄い。

私が実践しているのはそれとは違う。本業のFDE(フリーランスエンジニアとして企業のAI導入支援を行う仕事)を続けながら、storeforge(ドロップシッピング)、aerial-earth-studio(空撮動画YouTube)、afflow(SNSアフィリエイト)、民泊という4つの事業を並行して立ち上げている。これらは「本業の負荷を減らすための繋ぎ」ではなく、それぞれが将来的に本業に匹敵する収入源になり得るかを検証している事業だ。資産運用はこの上に乗る「増やす」フェーズの手段であって、「稼ぐ」手段の主軸ではない。

つまりサイドFIREが「資産+軽い労働」の二本柱なのに対し、複業FIREは「複数の事業+資産」の多本柱だ。労働を減らす方向ではなく、収入源を分散させる方向に舵を切っている。

なぜエンジニアはこの分岐点に立ちやすいのか

この分岐が生まれる背景には、エンジニアという職業特性がある。フリーランスエンジニアの本業収入は、パート・アルバイトに比べると単価が高い。だからこそ「本業をフルタイムでやりながら生活費を上回る余剰を確保し、その余剰を複数の事業立ち上げに再投資する」という選択肢が現実的に取れる。

もう一つ大きいのが、技術力そのものが事業の立ち上げコストを下げるという点だ。afflowのSNS運用ボットや、storeforgeの受発注フロー、aerial-earth-studioの動画編集パイプラインなど、複業4事業のどれもコーディングで効率化できる部分がある。これを外注せず自分で組めることが、複数事業を同時並行で回す上でのボトルネックを下げている。パート・アルバイトのような時間切り売り型の労働では、この「作った仕組みが資産として残る」感覚は得にくい。

エンジニアは、本業の単価の高さと、技術力を複業に横展開できる再現性の両方を持っている。だからこそ「軽い労働で繋ぐ」サイドFIREより、「事業を複数立ち上げて分散させる」複業FIREの方が、選択肢として合理的に見えてくる。これは万人に当てはまる話ではなく、あくまで自分がエンジニアという立場だからこそ辿り着いた判断だ。

判断材料にした3つのチェック軸

サイドFIREと複業FIREのどちらを選ぶかを考える際、私は次の3つを自分に問うた。

  1. 今の本業スキルは複業に転用できるか: 本業で培った技術やノウハウが、複業の立ち上げコストを下げられるなら、労働を減らすより事業を増やす方が時間対効果が高い。転用できないスキルなら、無理に事業を増やさずサイドFIRE的な設計の方が合理的になる
  2. 収入源を1つ増やすのにかかる時間はどれくらいか: すきま時間しか使えない前提で、1つの複業を「収入源と呼べる状態」まで育てるのに何ヶ月かかりそうか、事業ごとに見積もる。見積もりが甘いと複業を増やすほど息切れする
  3. 法人という器を使うメリットがあるか: 複数事業を同時に持つなら、収入の受け皿や責任の切り分けをどう設計するかも判断材料になる。この点はマイクロ法人運用の柱で別途書いているので詳細はそちらに譲るが、事業を増やす方向を選ぶなら早めに考えておいた方がいい論点だ

この3軸で見ると、自分の場合は1と2がどちらも複業FIRE寄りに振れた。本業のエンジニアリングスキルは4事業すべてに転用できたし、すきま時間だけでも「収入源と呼べる状態」まで育てられる見込みが立った事業があったからだ。逆にこの見積もりが立たない状態で複業を増やすと、労働時間だけが増えて資産形成が進まないという、サイドFIREより悪い結果になりかねない。

複業FIREを選んで変わった時間配分の考え方

サイドFIREとの一番の違いを実感するのは、日々の時間配分の判断基準だ。サイドFIREなら「本業の労働時間をどう減らすか」が最適化の軸になる。だが複業FIREでは「本業の時間はそのままに、すきま時間をどの事業への投資に振るか」が軸になる。

子は2人おり、子育てのすきま時間しか自分の裁量で使える時間はない。この限られた時間を、4つの事業のどれに配分するかは常に悩ましい判断だ。すべての事業に均等に時間を割くと、どれも中途半端なまま伸び悩む。かといって1つに絞り込むと、複数事業を並行検証する複業FIREの強みが消える。実際には、その時々で伸びの兆しが見えている事業に時間を多く配分し、停滞している事業は最低限のメンテナンスに留めるという、動的な配分をしている。この配分の判断軸そのものが、サイドFIREを選んでいたら発生しなかった悩みだと思う。

まとめ

  • サイドFIREは「資産+軽い労働」の二本柱、複業FIREは「複数の事業+資産」の多本柱という設計思想の違いがある
  • エンジニアは本業単価の高さと技術力の複業への転用性の両方を持つため、複業FIRE側に合理性が生まれやすい
  • 判断材料は「本業スキルの転用可否」「収入源1つを育てる所要時間の見積もり」「法人という器の必要性」の3軸
  • 複業FIREを選ぶと、時間配分の最適化軸が「労働時間を減らす」から「すきま時間をどの事業に振るか」に変わる

次回は、複業4事業それぞれの収入化までの見積もりと、実際にどう時間配分を動かしているかを具体的に書く。

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