家計簿の費目分けをリベ大(両学長リベラルアーツ大学)式の「4つの敵」に沿って再設計した。結論から書くと、既存の家計簿アプリの制約上、理想通りの分類は組めなかった。だが「毎月固定・毎月変動・不定期固定・不定期変動」という4象限の考え方自体は、既存アプリの枠組みに乗せる形で十分に再現できた。今回はその再設計の過程と、判断に迷った点を記録する。
目次
なぜ費目を今さら再設計したのか
私はMoneyForward ME(以下MF)で家計簿を数年間つけている。FIRE達成に必要な金額を自分の家計から逆算した際、年間支出額を算出するために既存の費目データを使おうとしたのだが、ここで問題に気づいた。費目が「食費」「日用品」「趣味・娯楽」「交際費」というMF標準の大項目に沿って作られたままで、支出が固定費なのか変動費なのか、毎月発生するものか不定期なものかが分類軸に反映されていなかったのだ。
固定費と変動費が同じ「日用品」の中に混在していると、削減の優先順位がつけられない。毎月固定で発生する支出と、年に数回しか発生しない支出が同じ大項目に並んでいると、月次の支出予測にノイズが乗る。FIREの目標額を逆算する土台としても、複業4事業と本業を並行運営する中で家計の可処分を把握する土台としても、この状態は精度が低すぎると判断し、費目そのものを作り直すことにした。
リベ大式「4つの敵」とMFの制約のズレ
リベ大式の家計管理では、支出を次の4象限に分類する。
- 敵1(毎月固定): 家賃・住宅ローン・通信費・保険料など、金額も発生タイミングもほぼ固定の支出
- 敵2(毎月変動): 食費・日用品費など、毎月発生はするが金額が変動する支出
- 敵3(不定期固定): 税金・年会費など、発生タイミングは決まっているが月次ではない支出
- 敵4(不定期変動): 旅行・冠婚葬祭・家具家電など、発生タイミングも金額も不定の支出
理屈は明快だが、MFにはこの4象限をそのまま大項目として使えないという制約がある。MFの大項目(食費・日用品・趣味娯楽・交際費など)はプルダウンで固定されており、ユーザー側で編集や追加ができない。中項目はカスタム追加できるが、大項目は動かせない。
そこで採用したのが、既存の4大項目ラベルを敵1〜4のラベルとして代用する運用だ。「食費」という表示名は残るが、中身は敵1(毎月固定)の支出だけを入れる。「日用品」は敵2(毎月変動)、「趣味・娯楽」は敵3(不定期固定)、「交際費」は敵4(不定期変動)という対応関係を決め、大項目の名前と実際の分類軸を意図的にずらして運用することにした。理想の実装ではないが、既存アプリを使い続けながら4象限の考え方を反映させるには、この妥協が現実的な落としどころだった。
79ファイル・7,946件の実データから中項目を設計する
大項目の割り当てを決めた後の本題は、各大項目の下にどんな中項目を作るかだった。ここで感覚や思いつきで項目を決めると、後で「この費目、結局何を入れる場所だったか思い出せない」という状態に陥る。過去に別の家計簿改善を試みて挫折した経験があったので、今回は同じ失敗を避けるために、実際の取引データを分析してから中項目を設計する手順を踏んだ。
具体的には、MFからエクスポートした79ファイル・7,946件のCSVをPythonで集計し、既存の費目ごとの月平均額・件数を洗い出した。この集計をもとに、以下のような整理を行った。
- 似た性質の支出をまとめる(例: サプリメントと筋トレ費用を「健康投資」として統合、外食・嗜好品・動画配信サービスなどを「レジャー」として統合)
- 発生頻度が低すぎる項目は「その他」的な受け皿に寄せず、性質が近い項目に吸収させる
- 事業性の高い支出(法人の税務処理に関わるものなど)は家計側から明確に切り離し、事業側の管理に回す
最終的に、4象限合計で40件の中項目にまとめた。内訳は敵1(毎月固定)が9項目、敵2(毎月変動)が9項目、敵3(不定期固定)が6項目、敵4(不定期変動)が16項目だ。敵4が最も項目数が多いのは、不定期に発生する支出ほど種類がバラつきやすいという実データの傾向をそのまま反映した結果だった。
判断に迷った項目をどう扱ったか
再設計の過程で、分類に迷った項目がいくつかあった。同じように迷う読者もいると思うので、実際にどう判断したかを残しておく。
- 子どもの習い事費用: 毎月定額で発生する契約なら敵1(毎月固定)寄りだが、月謝以外に教材費や単発イベント費が絡む契約だったため、いったん敵4(不定期変動)に置き、実際の発生パターンをもう少し観察してから敵1に動かすか判断することにした。分類に迷った項目は無理に即決せず、保留のまま運用してデータを見てから確定する方針を取った
- 書籍代: Amazon経由の決済は明細だけでは中身が事業用の書籍か家庭用の書籍か判別できないケースが多く、一部は確認待ちのまま残している。曖昧な支出を無理に分類しようとすると再設計自体が止まるので、判別できないものは「保留」のタグをつけて後回しにし、先に全体の枠組みを完成させることを優先した
- 法人代表としての社会保険料(厚生年金): 家計側ではなく、事業側(そろばん教室・民泊・SNS運用など複数事業を横断する管理シート)の敵1に計上した。個人の生活費と法人運営コストを同じ4象限の中で混在させると、どちらの支出を見直すべきかの判断がぶれるため、家計と事業は別グリッドで管理する形に切り分けた
- 投資(証券口座・iDeCo・小規模企業共済など): 支出ではなく資産形成なので、そもそも家計簿の集計対象から外した。4象限はあくまで「消費」を分類する枠組みであり、「増やす」お金の動きを同じ土俵に乗せると象限の意味が崩れると判断した
まとめ
- MoneyForward MEの大項目は編集不可のため、既存の4大項目ラベルをリベ大式「4つの敵」の代用ラベルとして運用する妥協案を採用した
- 中項目は感覚で決めず、79ファイル・7,946件の実データをPythonで集計してから設計し、家計側40件(敵1:9・敵2:9・敵3:6・敵4:16)にまとめた
- 分類に迷う支出は無理に即決せず、いったん保留の分類に置いてから実データの発生パターンを見て確定する
- 個人の生活費(家計)と法人運営コスト(事業側)は同じ4象限の中で混在させず、別グリッドで管理する
次回は、この再設計後の家計データを実際にどう運用し、支出の見直しにどうつなげたかを記録する。