マイクロ法人運用の1本目。私は現在、フリーランスエンジニア(FDE)としての個人事業と、Nogawa L.prince合同会社というマイクロ法人を、二刀流で運用している。今回は、なぜ個人事業だけで続けずにマイクロ法人という形を選んだのか、その意思決定プロセスを書く。
先に結論を書くと、法人化は「売上が増えたから」だけで決めたわけではない。本業(FDE)に加えて複業4事業を並行して動かし始めたタイミングで、事業ごとに責任の置き場所を分けたいという発想が先に生まれ、そこに売上規模の話が後から乗ってきた、という順序だった。
目次
トリガーは「売上」ではなく「事業構造の広がり」だった
法人化を検討し始めたきっかけは、売上が一定のラインを超えたことではない。むしろ先に来たのは、事業構造が広がったことだ。
「なぜ複数事業を同時に持つのか」で書いた通り、私は本業のFDEに加えて、storeforge(ドロップシッピング)、aerial-earth-studio(空撮動画)、afflow(SNSアフィリエイト)、民泊の4つの複業を並行して動かしている。この並行運用を始めた時点で、「本業の個人事業の中に、性質の全く違う複業4事業を全部間借りさせ続けるのは無理がある」という違和感が先に出てきた。
個人事業は、あくまで私個人の名前と信用の延長線上にある。一方で、複業のいくつか(特に民泊や物販系)は、契約や取引先との関係で「事業体として独立している」ことが望ましい場面が出てくる。この「事業を人格として切り分けたい」というニーズが、法人化を検討し始めた最初のトリガーだった。売上規模の話は、この違和感が固まった後で、法人を維持するコストに見合うタイミングかどうかを判断する材料として出てきた、という順番だ。
検討した選択肢は2つ、判断軸は3つ
検討の時点で選択肢は2つに絞られていた。1つは個人事業のまま複業を拡大し続けること、もう1つは法人を作って一部の事業を法人に移すことだ。
判断軸にしたのは次の3つだった。
- 事業の切り分けやすさ: 本業(FDE)は個人の専門スキルに強く紐づく仕事で、法人化してもしなくても実態はあまり変わらない。一方、複業の一部は「事業」としての独立性を持たせた方が、取引先や金融機関とのやり取りがスムーズになる場面が想定できた
- 管理コストの許容範囲: 法人には個人事業にはない事務負担(法人登記、決算、法人口座の管理など)が発生する。すきま時間で複数事業を回している以上、この管理コストを増やしてでも得られるメリットがあるかを見極める必要があった
- 将来設計との整合性: FIREを最終目標に据えている中で、資産形成の器をどう設計するかは、目先の売上規模よりも長い時間軸で効いてくる。個人事業のままだと選べない選択肢が、法人という器を持つことで開けるかどうかを考えた
3つの軸で比較した結果、「本業は個人事業のまま残し、複業の一部を法人に持たせる」という二刀流の形が、自分の事業構成には一番合っていると判断した。全部を法人化するのでも、全部を個人事業のままにするのでもない、中間案を選んだことになる。
なぜ「全部法人化」でも「個人事業のまま」でもなかったか
ここが今回一番書きたかった部分だ。世の中の法人成りの記事の多くは「個人事業から法人へ完全移行する」か「個人事業を続けるか」の二択で語られることが多い。だが私の場合、本業(FDE)と複業4事業という、性質の異なる事業を複数抱えていたことが、単純な二択に収まらない判断を生んだ。
本業のFDEは、私個人のスキルと信用がそのまま価値の源泉になっている仕事だ。ここを法人に移すと、個人としての専門性のブランディングと、法人としての事業運営が混ざってしまい、かえって扱いにくくなると考えた。一方で複業側は、事業そのものを育てて第三者に価値を提供する性質が強く、法人という器の方が馴染みやすい。
この「本業は個人の専門スキルに紐づく」「複業は事業として独立させたい」という性質の違いが、個人事業とマイクロ法人を両方持つという結論に至った一番の理由だ。これはあくまで自分の事業構成(本業1つ+性質の異なる複業4つ)に固有の判断であり、フリーランス全般に法人化を勧める話ではない。実際、本業だけで完結している人であれば、この二刀流という結論には至らなかったはずだと思う。
まとめ
- 法人化のきっかけは売上規模ではなく、性質の異なる複数事業を1つの個人事業に間借りさせ続けることへの違和感だった
- 検討した選択肢は「個人事業のまま拡大」と「法人化」の2つ、判断軸は「事業の切り分けやすさ」「管理コストの許容範囲」「将来設計との整合性」の3つ
- 本業(個人の専門スキルに紐づく)と複業(事業として独立させたい)の性質の違いから、全部法人化でも個人事業のままでもなく、二刀流という結論に至った
- この判断はあくまで自分の事業構成に固有のものであり、一般化した助言ではない
次回は、実際にマイクロ法人(Nogawa L.prince合同会社)を設立した際の具体的な手続きと、設立時に決めた個人事業と法人の役割分担について書く予定だ。