「税理士はどう選んだか」で顧問契約の選定基準は書いたが、今回はその手前にある問い、経理のどの作業を自分でやり、どこから税理士に渡すかという線引きの中身を書く。
先に結論を書くと、私は「自分でやる/やらない」を一括で決めなかった。経理作業を工程ごとに分解し、工程単位で担当を振り分けた。全部自分でやる、全部税理士に任せる、という二択で考えるとどちらも自分の状況には合わず、工程を分解して初めて納得できる線引きが見えた。
目次
なぜ「全部自分」でも「全部税理士」でもなかったか
法人化した直後、経理をどう回すかで最初に考えたのは「記帳から申告まで丸ごと自分でやる」か「記帳代行込みで税理士に丸投げする」かの二択だった。だが、どちらもすぐに違和感が出た。
丸ごと自分でやる案は、本業(FDE)と複業4事業を並行運用している時間の制約と合わなかった。法人の決算・法人税申告は、個人の確定申告と勝手が違う。均等割の扱いや申告書類の様式など、知識のキャッチアップに使う時間を考えると、間違えたときのリカバリーコストが読みにくい領域に自分の学習コストを割くのは非効率だと判断した。
一方、丸ごと税理士に任せる案は、固定費の面で見合わなかった。マイクロ法人はまだ事業規模が小さいフェーズで、記帳代行まで含めたフルサービス型の顧問料は、規模に対して重すぎる。しかも記帳自体は、日々の取引をクラウド会計ソフトに入力するだけの作業で、自分でも十分こなせる規模だった。
この2つの違和感を突き合わせた結果、「経理を丸ごと一単位で外注するかしないか」という発想そのものが自分には合わないと気づいた。そこで作業を工程に分解する方向に切り替えた。
経理を4つの工程に分解する
自分の場合、経理の流れを次の4工程に分解した。
- 日々の記帳(取引の入力・仕訳): クラウド会計ソフトに、法人口座・法人カードの取引を月1回まとめて入力する作業
- 月次のレビュー・相談: 入力した記帳データが妥当か、経費の按分や役員報酬の扱いで迷った点を確認する作業
- 決算整理・法人税申告書の作成: 決算期に必要な調整仕訳や、申告書類一式の作成
- 申告書の提出・税務対応: 実際の提出、税務署とのやり取りが発生した場合の対応
この4つのうち、自分が担当しているのは「日々の記帳」だけだ。残り3つ(月次レビュー、決算整理・申告書作成、提出・税務対応)はすべて税理士に依頼している。
工程で分解して初めて分かったのは、自分が抵抗を感じていたのは「経理をやること」全般ではなく、「専門性が高く間違えると後戻りコストが大きい工程を自分の判断だけで進めること」だったという点だ。記帳は間違えても月次レビューで拾ってもらえるが、決算整理や申告書は間違えたときの影響が税務上のリスクに直結する。ここの非対称性を工程ごとに評価したことで、線引きの解像度が上がった。
判断基準にしたのは「間違えたときの戻しやすさ」
工程を分解した後、どこまでを自分でやるかを決める判断基準として使ったのが「間違えたときに戻せるかどうか」だった。
- 記帳の入力ミスは、月次レビューの段階で税理士が気づいて修正できる。戻せるコストが小さい
- 決算整理や申告書の記載ミスは、提出後に気づくと修正申告など後戻りの手続きが発生し、時間もリスクも一気に重くなる。戻せるコストが大きい
この基準に沿うと、「戻せるコストが小さい工程は自分でやり、戻せるコストが大きい工程は専門家に渡す」という切り分けが自然に出てくる。売上規模や作業の単純さで線を引くのではなく、ミスをリカバリーする難易度で線を引いたのが、自分にとっては一番納得感のある基準だった。
なお、この基準はあくまで自分の事業規模・法人構成(民泊のみを法人に載せている状態)における判断であり、記帳量や取引の複雑さが変われば線引きも変わり得ると考えている。
実際に運用してみて変わったこと
この工程分解にもとづく役割分担を1年ほど続けている中で、当初の想定と変わった点が2つある。
1つは、記帳という「戻せるコストが小さい」工程でも、自分が気づかないまま同じ入力ミスを繰り返していたケースがあったことだ。月次レビューで税理士から同じ指摘を複数回受け、記帳ルールを自分の中で明文化するきっかけになった。工程を分けたことで、レビューという形でフィードバックが定期的に返ってくる仕組みそのものが、記帳の質を上げる副次効果を持っていた。
もう1つは、「自分でやる」と決めた記帳作業も、事業規模が大きくなれば戻せるコストの評価が変わり得るという点だ。現状は法人に載せている事業が1つ(民泊)に絞られているため記帳量が読みやすいが、他の複業を法人側に載せる判断をした場合、記帳の複雑さが増して「戻せるコストが小さい」という前提自体が崩れる可能性がある。その時点で改めて、記帳代行込みのプランへ切り替えるかどうかを検討することになると考えている。
まとめ
- 経理を「全部自分」か「全部税理士」かの二択で考えず、工程(記帳/月次レビュー/決算整理・申告書作成/提出・税務対応)に分解してから担当を割り振った
- 自分が担当するのは記帳のみ、残り3工程は税理士に依頼している
- 判断基準は売上規模や作業の単純さではなく「間違えたときに戻せるコストの大小」
- 記帳という比較的軽い工程でも月次レビューを通じてミスの傾向が可視化され、記帳ルールを明文化するきっかけになった
次回は、法人と個人事業それぞれの確定申告・決算のスケジュールをどう回しているか、実際の年間の動きを書く予定だ。