「FIREへの軌跡」柱の2本目。前回は「何から自由になりたいか」という動機の棚卸しを書いた。今回はその続きとして、自分の家計を実際に使って「FIRE達成に必要な金額」を逆算した過程を記録する。
先に結論を書くと、私の場合の目安額は年間支出額の25倍、5,000万円という数字になった。ただしこの記事の主眼は最終的な金額そのものではない。どの支出データを使い、どこを削り、どこを削らずに残したかという計算過程の方に価値があると考えている。
目次
逆算の出発点は「4%ルール」と自分の年間支出
FIREの目標額を計算するときによく使われるのが「4%ルール」だ。資産の4%を毎年取り崩しても、運用益との兼ね合いで資産が尽きにくいという経験則で、逆に言えば「年間支出額×25」が資産の目標額になる。
このルール自体は他のFIREブログでも散々語られているので、ここでは深追いしない。私が実際にやったのは、この計算式に自分の実際の年間支出額を当てはめる作業だ。ここで重要なのは、感覚値ではなく、家計簿再設計(リベ大式4象限)で運用しているMoneyForwardの実データを使ったことだ。以前、家計を4象限(固定費・変動費・浪費・投資)に再設計した際に整理した支出カテゴリがそのまま使えたので、今回の逆算はその延長線上にある。
支出を「今のまま」と「FIRE後」で2パターン計算する
年間支出額をそのまま25倍すればいいわけではない。私は支出を2パターンに分けて計算した。
- 現状維持パターン: 今の家計簿の年間支出をそのまま25倍する。子2人の教育費・生活費を含む、今の生活水準を変えない前提の金額
- FIRE後パターン: 本業(FDE)をやめた前提で、実際に減る支出・増える支出を反映した金額
現状維持パターンでの年間支出は200万円、これを25倍すると5,000万円になる。一方、FIRE後パターンでは以下のような増減を見込んだ。
- 減る支出: 本業に伴う交通費・在宅ワーク用の設備更新費、時短のための外食・宅配サービス利用の一部
- 増える支出: 子どもと過ごす時間が増えることで想定される教育・体験費用の増加、マイクロ法人の維持コスト(社会保険料や税理士報酬など、個人事業とは別枠でかかる固定費)
減る支出と増える支出を差し引きした結果、FIRE後パターンの年間支出は現状維持パターンとほぼ同水準、むしろ10万円ほど増える計算になった。これは正直、逆算する前の予想と違った。「働かなくなれば支出は減るはず」という漠然とした思い込みがあったが、実際に数字を積み上げると、子育て世帯かつマイクロ法人を維持する前提では支出はそう簡単に減らないと分かった。
削るべきか迷った支出項目のチェックリスト
逆算の過程で、いくつかの支出項目は「これは削って計算すべきか、残すべきか」で判断に迷った。同じように迷う読者もいるはずなので、実際に使った判断基準を残しておく。
- 子どもの教育費: FIRE後も減らす対象にしない。理由は「子育て×FIRE」を目指す動機そのものが子どもの選択肢を狭めないことにあるため(前回記事で書いた「支出の自由」の軸と直結する)
- マイクロ法人の維持コスト: FIRE達成後も法人を畳む予定がない限り、固定費として残す。FIREを「事業を全部やめる」と定義していない以上、ここを削るのは前提と矛盾する
- 住居費: 現状の賃貸・ローンをそのまま横引きするか迷ったが、都度見直す性質の支出のため、今回は「現状維持」で固定し、将来の住み替えは別の記事で扱うことにした
- 複業4事業の運営コスト: storeforge・aerial-earth-studio・afflow・民泊、それぞれにかかる小さな運営費(サーバー代、機材更新費など)は、収益化前の投資段階にある事業もあるため、支出側に残したまま計算した。収益が出れば支出ではなく収入側の計算に組み込み直す
迷ったときの判断軸は共通していて、「FIRE後もその支出を発生させる活動を続ける前提かどうか」で残すか削るかを決めた。本業をやめる前提の支出は削り、複業やマイクロ法人のように続ける前提の活動に紐づく支出は残す、というシンプルなルールだ。
出てきた数字をどう受け止めたか
計算の結果、FIRE達成の目安額は5,000万円になった。現時点の資産額(3,700万円)と比較すると、まだ距離がある数字だ。
この数字を見て最初に感じたのは「思ったより遠い」ではなく「思ったより解像度が上がった」という感覚だった。以前は「FIREにはいくら必要か」という問いに対して、他のブログで見かける「○千万円あれば」という目安をなんとなく借りてきていた。しかし自分の家計、しかも子育て世帯かつマイクロ法人運営という条件を反映させた数字は、他人の目安とは当然違う形になる。
もう一つ意識したのは、この5,000万円という数字を固定のゴールとして扱わないことだ。子どもの成長段階が変われば教育費の内訳は変わるし、複業4事業のうちどれかが軌道に乗れば支出構造そのものが変わる。今回の逆算はあくまで「今の家計を前提にした現時点のスナップショット」であり、今後も年1回程度は同じ手順で計算し直すつもりだ。
まとめ
- FIRE達成額は「年間支出×25(4%ルール)」で計算したが、支出データは家計簿再設計で整理済みのMoneyForward実データを使った
- 支出は「現状維持」と「FIRE後」の2パターンで計算し、FIRE後も支出はほぼ減らない(むしろ微増する)という想定外の結果になった
- 支出項目を削るか残すかは「FIRE後もその活動を続ける前提かどうか」で判断した(教育費・マイクロ法人維持コストは残し、本業起因の支出は削った)
- 算出した金額は固定ゴールではなく、家計や事業構造の変化に合わせて年1回程度見直す前提のスナップショットとして扱う
次回は、この目標額に対して現在の資産形成がどのペースで進んでいるか、実際の積み上げ状況を記録する。