「FDEに興味があるが、自分に向いているか分からない」という相談を受けることがある。私自身、日本企業のクライアント先でFDEとして働きながら、この職種が誰にでも向いているわけではないと実感している。今回は、実際にやってみて分かった、向いている人と向いていない人の特徴を書く。
向いている人の特徴
要件が固まる前に動き出せる
以前書いた通り、FDEの案件は要件が固まっていない状態から始まることが多い。「何を作るか」が明確な指示書を待ってから動くタイプの人には、この状態はストレスになりやすい。逆に、曖昧な状態からでも仮説を立てて手を動かし、動くものを見せながら要件を一緒に固めていくやり方に苦を感じない人は、FDEの働き方に向いている。
技術以外の障害物を厭わない
稟議・情シス・予算構造という壁は、日本企業でAI導入を進める上で避けて通れない。この障害物を「本来の仕事ではない」と感じて後回しにするか、「導入を進めるための仕事の一部」として引き受けられるかで、FDEとしての成果は大きく変わる。稟議資料の作成や情シスとの事前調整を厭わない人の方が、明らかにこの職種に向いている。
責任範囲を自分で広げられる
指示された作業だけをこなすのではなく、「このままでは本番に定着しない」と感じたときに、契約の文言に関わらず必要な動きを自分から取れる人は強い。FDEとSESの違いで書いた通り、FDEは成果責任を負う契約であり、この責任感を自分の内側から持てるかどうかが成果に直結する。
非エンジニアへの説明を面倒がらない
非エンジニアの顧客にAIの不確実性を説明する場面は日常的に発生する。技術的に正しいことを、技術者ではない相手に分かる言葉で翻訳する作業を「本質的でない」と切り捨てず、むしろ重要な仕事だと捉えられる人は、FDEとしての信頼を積み上げやすい。
向いていない人の特徴
明確な仕様書がないと動けない
仕様が固まってから初めて実装に入りたいタイプの人にとって、FDEの働き方は落ち着かないものになりやすい。仕様が固まる前に動いて、後から手戻りが発生することへの耐性がないと、この職種は消耗しやすい。
技術力だけで評価されたい
FDEの成果は、技術的な実装の巧拙だけでは測られない。稟議を通したか、現場に定着したか、非エンジニアを説得できたかといった、コードの外側の要素が評価に直結する。「技術力だけを純粋に評価してほしい」という志向が強い人には、この評価軸のズレがフラストレーションになりやすい。
契約範囲を厳密に守りたい
SES的な発想で「契約に書かれていないことはやらない」というスタンスを取ると、FDEとしては機能しにくい。前回書いた単価交渉でも触れたが、責任範囲を自分で広げる前提の契約形態が多いため、契約範囲の外側に出ることそのものに強い抵抗がある人には向かない。
1つの現場に長く腰を据えたい
FDEの仕事は、本番定着というゴールに向けて動き、達成すれば次の現場に移ることが多い。同じ現場・同じチームで長く働き続けることに価値を置くタイプの人には、この流動性が合わないことがある。
向き不向きは技術力の高低ではない
ここまで書いた特徴は、技術力の高低とはほとんど関係がない。純粋なコーディング能力が高くても、要件が固まらない状態への耐性がなければFDEとしては苦しい。逆に、技術力が飛び抜けて高くなくても、稟議や説明を厭わず責任範囲を自分で広げられる人は、FDEとして成果を出しやすい。
向いているかどうかを判断する材料として、この記事が参考になれば書いた意味がある。
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