Nogawa L.prince合同会社を設立してから、まもなく1年が経つ。今回は「法人化は子育て時間を圧迫したのか」という、法人運営実務からは少し外れるが、私にとっては一番大事な問いに答える。
先に結論を書くと、法人化そのものが子育て時間を直接削ったことはほとんどない。減ったのは「法人設立の初期数ヶ月」に限定された一時的な時間で、運用が回り始めてからの定常コストは、事前に想定していたより小さかった。ただし、これは「法人だから」ではなく「法人という器を、子育て時間を守るために使う設計にしたから」という側面が大きい。今回はその中身を書く。
目次
そもそも「上位目的」とは何か
私の場合、事業を複数持つこと・法人を持つことは、それ自体が目的ではない。上位目的は子育て時間を確保しながらFIREに向けた資産形成を進めることで、本業・複業4事業・法人という構造は、その上位目的を達成するための手段の1つに過ぎない。
この順序を先に書いておくのは、法人運営の実務記事を読んでいると「効率化」「節税」「事業拡大」といった、法人側の論理だけで語られがちだからだ。私にとって法人化の成否を測る一番の基準は、節税額でも売上規模でもなく、「子育て時間が削られていないか」だった。今回はこの基準に沿って1年を振り返る。
増えた時間・減った時間を項目別に洗い出す
体感だけで「影響はなかった」と結論づけるのは危ういので、設立前後で発生した作業を項目別に振り返った。
- 法人設立の手続き(設立時のみ): 定款作成、登記、法人口座開設などで、まとまった時間が数週間にわたって発生した。この期間は明確に「子が寝た後の時間」を通常より多く法人事務に振り替えており、複業の作業時間を一時的に削った自覚がある
- 月次の記帳・経理: クラウド会計ソフトを使い、複業のうち法人に持たせた事業の取引を月1回まとめて入力する運用にした。1回あたり30分程度で、個人事業だけだった頃と比べると増えた作業だが、頻度は月1回に抑えている
- 決算・税務申告: 年1回、税理士に依頼している部分と自分で対応する部分がある。自分で対応する範囲は資料準備が中心で、5時間程度をかけている。この時期は他の複業タスクを一時的に減らして対応している
- 法人口座・クレジットカードの管理: 個人事業の口座と分けたことで、資金移動の確認作業が増えた。ただし月1〜2回、10〜15分程度の作業に収まっている
洗い出してみると、「法人だから恒常的に時間を取られている」項目は実は少なく、決算期など特定のタイミングに作業が集中する構造だとわかった。この集中するタイミングさえ事前に把握できていれば、平日のすきま時間の設計自体は崩れない。
なぜ定常コストを小さく抑えられたか
理由は2つあると考えている。
1つは、「なぜ個人事業だけで続けずマイクロ法人を作ったのか」で書いた通り、本業(FDE)は個人事業のまま残し、複業の一部だけを法人に持たせる二刀流にしたことだ。もし全事業を法人に一本化していたら、経理・申告の対象範囲が広がり、月次の記帳作業ももっと増えていたはずだ。法人が扱う範囲を絞ったことが、そのまま管理コストの絞り込みにつながっている。
もう1つは、記帳や資料整理といった「考えなくてもできる」作業を、子育てのすきま時間の中でも細切れ時間(朝の身支度中や送迎の合間)に意図的に寄せたことだ。「本業+複業4事業を、子育てのすきま時間だけで回す時間割の作り方」で書いた時間帯ごとの質のマッチングが、法人事務にもそのまま適用できた。決算資料の準備のような重い作業は夜のまとまった時間に、日々の記帳のような軽い作業は細切れ時間に、という振り分けが自然にできている。
それでも削られた時間は正直にある
一方で、影響がゼロだったと言い切るのは正確ではない。設立直後の数ヶ月は、法人口座の開設待ちや初回の記帳ルール確立に想定より時間がかかり、夜の時間を法人事務に多く使った時期があった。この時期は複業側のタスクの進みが一時的に鈍った実感がある。子どもと過ごす時間そのものを削った記憶はないが、「本来なら複業の思考系タスクに使いたかった夜の時間」を事務作業に振り替えていたのは事実だ。
この経験から学んだのは、法人設立や決算といった「作業量が読みにくいイベント」がある時期は、他の複業タスクの期待値を事前に下げておくべきだということだ。子育て時間を死守する代わりに、複業側の進捗が一時的に遅れることを許容する、という優先順位を自分の中で先に決めておいたことが、結果的に子育て時間を守れた一番の要因だったと思う。
まとめ
- 法人化そのものが子育て時間を恒常的に削ることはほとんどなく、削られたのは設立初期の一時的な期間に限られた
- 定常的な作業は月次の記帳(30分程度)と口座管理程度で、決算期に作業が集中する構造だとわかった
- 法人に持たせる事業範囲を絞ったこと、法人事務も時間帯ごとの質ですきま時間に振り分けたことが、定常コストを小さく抑えた理由
- 作業量が読みにくいイベント(設立・決算)の時期は、複業側の期待値を先に下げておくことで子育て時間を守った
次回は、決算期に実際どのタスクをどう配分したか、繁忙期の時間割の組み方を具体的に書く予定だ。