先に結論を書く。私は「フルFIRE」を最終ゴールに置いていない。目指しているのは、本業か複業の一部を意図的に残す「サイドFIRE」の形だ。これは以前の記事で書いた「サイドFIREか複業FIREか」という収入構造の話とは別の軸の決定だ。今回は「そもそも労働をゼロにすることを目指すのか、それとも残すのか」という、ゴールの形そのものをどう決めたかを書く。

サイドFIREとフルFIREは「軸」が違う問い

以前、「サイドFIREか複業FIRE(自分の造語)か」という記事で、収入源を1つの箱に依存させるか複数の箱に分散させるかという設計思想の違いを書いた。今回のサイドFIREとフルFIREの対比は、それとは別の軸だ。こちらが問うているのは「労働を完全にゼロにするかどうか」という、最終到達点の形の話になる。

フルFIREは、資産からの取り崩しだけで生活費のすべてを賄い、労働から完全に離れる状態を指す。サイドFIREは、資産の取り崩しに加えて何らかの労働収入を残し、その組み合わせで生活を成立させる状態を指す。私の場合、複業4事業とマイクロ法人という「複数の箱」を持つ設計(これは前回書いた複業FIRE寄りの話)を選んだ上で、さらに「その箱のどれかは畳まずに残し続ける」という決定をしている。つまり収入構造の軸ではサイドFIRE寄り・複業FIRE型を選び、最終ゴールの軸でもサイドFIRE型を選んでいる、ということになる。

なぜフルFIREを目指さなかったか

フルFIREを目指さない理由は、資産額の到達が難しいからではない。仮に必要資産額に届いたとしても、そこで全ての労働をゼロにすることには魅力を感じないというのが正直なところだ。

理由は主に3つある。1つ目は、本業のFDE(企業のAI導入支援)そのものに一定のやりがいを感じていること。クライアントの課題にAIで向き合う仕事は、資産形成の手段である以前に、単純に続けたい仕事だ。2つ目は、複業4事業のうち少なくとも1つは「事業として育てる過程そのもの」が目的化していて、収入がFIRE基準を満たしても畳む理由にならないこと。storeforgeやaerial-earth-studioは、収益性の検証と並行して「自分の手で事業を作る」プロセス自体に価値を置いている。3つ目は、完全に労働をゼロにした状態を想像したときに、子どもたちに見せたい自分の姿とズレを感じたことだ。働かない父親ではなく、裁量を持って働き方を選べる父親でいたいという感覚に近い。

この3つのどれもが「一般的にはこうすべき」という話ではなく、私個人の価値観に基づく判断だ。フルFIREを目指す人を否定する意図は一切ない。

判断を固めるために使った1つの問い

サイドFIREかフルFIREかを決めるにあたって、私が自分に投げた問いは1つだけだ。「もし今すぐ生活費を賄える資産があったとして、それでも続けたい仕事や事業はあるか」。

この問いに「ある」と即答できるなら、フルFIREをゴールにする必要はない。労働をゼロにすることが自由の獲得ではなく、むしろ「続けたい仕事を続ける自由」を手放すことになりかねないからだ。逆に「今の仕事は資産形成の手段でしかなく、資産が貯まったらすぐ辞めたい」と感じるなら、フルFIREを目指す方が整合的だ。

私はこの問いに、FDEの仕事についても、複業のうち少なくとも1事業についても「ある」と答えた。この時点で、私にとってのFIREのゴールはフルFIREではなくサイドFIREだと決まった。逆に言うと、複業4事業のうち「ある」と答えられない事業については、資産形成の手段として割り切って、収益性次第で畳む対象として扱っている。読者がこの判断をする際も、事業や仕事を1つずつこの問いに当てはめて仕分けると、どれを残しどれを手段として割り切るかの線引きがしやすくなるはずだ。

「残す労働」の量は資産額と連動させて考えている

サイドFIREをゴールに据えると、次に出てくる問いは「では労働をどれくらい残すのか」だ。ここは資産額の進捗と連動させて考えている。

現時点の資産規模では、本業のFDEを主軸に置きつつ複業を並行運用するという、労働負荷がまだ高い状態にある。資産形成が進むにつれて、この労働負荷をどう減らしていくかは、資産の取り崩し可能額と、残したい仕事・事業の労働量を突き合わせながら段階的に調整していくつもりだ。具体的な資産額の推移や取り崩し計画は別記事(FIRE達成に必要な金額を家計から逆算した記事)で扱っているので、今回は詳細な数字には触れない。ここで言いたいのは、「サイドFIREのゴールを決めたら終わり」ではなく、残す労働の量自体も資産の進捗に応じて見直し続ける前提だということだ。

まとめ

  • サイドFIREとフルFIREの選択は「労働をゼロにするかどうか」という軸で、収入源を分散させるかどうかの軸(サイドFIREか複業FIREか)とは別の判断
  • 資産額が届いても働き続けたいと思うかどうかで、フルFIREを目指す必然性は変わる
  • 「今すぐ資産が足りたとしても続けたい仕事・事業はあるか」を1つずつ問うことで、残す対象と手段として割り切る対象を仕分けられる
  • 残す労働の量は固定せず、資産の進捗に応じて段階的に見直していく前提で考えている

次回は、サイドFIREのゴールを前提にした場合の「必要資産額」の再計算について書く。

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