FIREの目標資産額を計算するとき、生活費は過去の家計簿から比較的精度高く見積もれる。だが教育費だけは違う。進路によって数百万円単位でブレる上に、決定権の一部が子ども自身にある。今回は、我が家の教育費を「幅」として試算し、FIRE目標資産にどう織り込んでいるかを書く。結論から言うと、私は教育費を単一の数字で見積もることをやめ、シナリオ別の幅で管理し、目標資産に「教育費バッファ」として上乗せする方式にした。

目次

なぜ教育費だけ別枠で扱うのか

FIRE目標資産の試算では、生活費×年数+αで考えるのが一般的だ。私も家計再設計プロジェクトで生活費は4象限に分けて管理しており、ここは比較的読みやすい(詳細は別記事で書いた)。

一方で教育費は、他の生活費と性質が違う。第一に金額の幅が桁違いに大きい。進路がすべて公立か、途中から私立や理系の大学に進むかで、子ども1人あたり数百万円単位の差が出る。第二に、確定するタイミングが遅い。生活費は今の支出実績から精度高く外挿できるが、教育費は子どもの進路希望や適性が固まってから初めて確定に近づく。第三に、決定権が完全には自分にない。子どもの意思や適性が絡む支出を、親の資産計画だけで固定するのは無理がある。

この3つの性質があるため、教育費を生活費と同じ「確定値として積み上げる」扱いにすると、FIRE計画そのものが不安定になる。だから私は教育費を切り出して、別枠のシナリオ試算にしている。

シナリオを3段階に分けて試算する

我が家は子どもが2人いる。年齢の詳細は伏せるが、いずれもFIRE目標時期までに進路の分岐点を複数回迎える。私が実際に使っている試算のやり方は、進路を「オール公立」「一部私立」「私立多め」の3シナリオに分け、子ども1人あたりの総額レンジを当てはめる方法だ。

  1. 下限シナリオ(オール公立): 幼稚園から大学まで基本的に公立・国公立を選んだ場合。教育費の目安データを参照すると、1人あたり総額はおおむね800万円程度に収まる
  2. 中央値シナリオ(一部私立混在): 高校または大学のどちらかで私立を選んだ場合。1人あたり1,200万円程度を見込んでいる
  3. 上限シナリオ(私立多め+習い事・留学等): 私立中高一貫や理系私立大学、さらに習い事や留学費用まで積む場合。1人あたり2,000万円を超える可能性がある

子どもが2人なので、この各シナリオを人数分単純に掛け算すると幅はさらに広がる。ここで重要なのは、下限シナリオの金額でFIRE後の生活が破綻しないかを確認することだ。私は下限シナリオを「必達ライン」、上限シナリオを「余裕があれば実現したいライン」と位置づけ、目標資産には下限〜中央値の間を基本ラインとして組み込み、上限との差額は「教育費バッファ」として資産形成のペースを緩めない理由づけに使っている。

試算に使ったデータソースと、あえて使わなかった数字

具体的な金額を試算する際、公的機関や金融機関が公開している教育費データ(文部科学省の子供の学習費調査、日本政策金融公庫の教育費負担の実態調査など)を参照した。ただし、これらの数字をそのまま自分のFIRE計算に当てはめることはしていない。

理由は2つある。1つは、平均値には地域差・物価上昇の反映タイムラグがあり、自分が住む地域や今後10年以上先の物価水準とはズレる可能性が高いこと。もう1つは、平均値は「実際に選ばれた進路」の平均であって、「自分の子どもが将来選ぶ進路」の予測値ではないことだ。

そこで私は、公的データの数値をベースにしつつ、自分なりの補正を1つだけ加えている。物価上昇率を保守的に見て毎年数パーセント積み増した金額を上限シナリオに反映する、という補正だ。この補正幅も年2%程度という粗い数字にとどめており、精緻なインフレ予測をしているわけではない。教育費試算において重要なのは精緻さより「下限シナリオでも詰まないこと」を確認する保守性だと考えている。

FIRE目標資産への組み込み方

教育費バッファをFIRE目標資産にどう反映しているかを整理すると、次のようになる。

  • 目標資産の生活費部分には、下限〜中央値シナリオの教育費を按分して組み込む(毎年の生活費の一部として計上する)
  • 上限シナリオとの差額は、目標資産全体に対して一括の「教育費バッファ」として上乗せする
  • バッファの取り崩しタイミングが読めないため、株式などの流動性の高い資産の一部をこのバッファに紐づけて管理する。特定の金融商品を教育費専用に固定する「教育資金口座」方式は今のところ採用していない
  • 年に一度、子どもの学年が上がるタイミングで進路の見通しを見直し、シナリオの重み(下限寄りか上限寄りか)を更新する

この運用にしてから、教育費が「いつか確定する不安要素」ではなく「毎年見直す変数」に変わった。FIRE目標資産の計算が1回きりの確定作業ではなく、継続的なメンテナンス作業だと捉え直せたのは、この教育費バッファの仕組みを作った副次効果だと思っている。

まとめ

  • 教育費は金額の幅が大きく、確定時期が遅く、決定権も親だけにないため、生活費とは別枠で試算している
  • 進路を「下限(オール公立)」「中央値(一部私立)」「上限(私立多め)」の3シナリオに分け、子ども1人あたりの総額レンジを当てはめて試算する
  • 公的データの平均値をそのまま使わず、保守的な物価上昇補正を加えた上で、下限シナリオが破綻しないことを最優先で確認する
  • FIRE目標資産には下限〜中央値を生活費に按分して組み込み、上限との差額は流動性の高い資産に紐づけた「教育費バッファ」として別枠管理し、毎年見直している

次回は、この教育費バッファも含めたFIRE目標資産の全体像と、そこに到達するための現在の進捗を記録する。

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