FIREを目指していると聞くと、「早く仕事をやめたいんですね」と言われることがある。だが私の場合、それは半分正しくて半分違う。資産で生活費を賄える状態にはなりたいが、働くこと自体をゼロにしたいわけではない。今回は、FIRE達成後も続けたいと思っている働き方と、逆にもう二度とやりたくないと思っている働き方を、実際に今やっている本業・複業の中身に照らして具体的に切り分ける。
「FIRE=労働からの解放」という前提を疑う
FIREという言葉を最初に知ったとき、私も「経済的自立=早期リタイア」というセットで理解していた。だが本業のFDE(企業のAI導入支援)と複業4事業(storeforge、aerial-earth-studio、afflow、民泊)を実際に回してみて、この前提に違和感を持つようになった。
理由は単純で、複業4事業のうち少なくとも1つは、収益性とは別に「やっていて苦にならない」という感覚があるからだ。aerial-earth-studioの空撮動画制作がそれにあたる。編集作業に何時間かけても疲労感より充実感の方が勝る日が多い。もしFIREを達成して生活費の心配がなくなったとしても、この作業自体はやめないだろうと今の時点で予想がつく。
一方で、本業のFDEにおける稼働時間の調整や、複業の中の定型オペレーション作業は、FIREを達成した瞬間に真っ先に手放したいと感じている。同じ「働く」という行為の中でも、続けたい部分とやめたい部分がはっきり分かれている。この解像度を持たずに「FIRE=働かない」とひとくくりにすると、達成後に自分がどう過ごしたいのかを見誤ると考えるようになった。
働き続けたい理由を3つに分解する
「なぜ働き続けたいのか」を漠然と考えても答えは出てこなかったので、自分の実感を3つの理由に分解してみた。
- 裁量権を手放したくない: 本業のFDEはクライアントワークである以上、常に相手の意思決定が絡む。だが複業4事業、特にaerial-earth-studioやstoreforgeは、何を作るか・どう売るかを自分だけで決められる。FIREを達成して生活費の心配がなくなった後も、この「自分で決める」働き方自体はやめたくないというのが一番大きい理由だ
- 技術力・スキルが陳腐化する恐怖がある: エンジニアとして手を動かし続けているからこそ、企業のAI導入支援という専門性が保てている。完全に手を止めてしまうと、数年後に「何もできない人」に戻ってしまう不安がある。これは資産の話ではなく、自分自身の市場価値を維持したいという話だ
- 社会との接点を保ちたい: 民泊やaerial-earth-studioは、直接会うことのない相手とはいえ、ゲストや視聴者という「外部からの反応」がある事業だ。完全に働くことをやめると、この外部からの反応が一気になくなる。子育て中心の生活だけでは埋まらない部分だと自覚している
3つとも共通しているのは、「お金のため」という理由が一つも入っていない点だ。これはFIREという言葉が本来目指す状態、つまり「お金のために働く必要がなくなった後」に何が残るかを考えた結果でもある。
働きたくない理由は「作業」であって「仕事」ではない
逆に、FIRE達成後にやめたいと思っている働き方も棚卸ししてみると、興味深いことに気づいた。「やめたい」と感じているのは事業そのものではなく、その中の特定の作業だという点だ。
- 本業のFDEにおける稼働時間の調整: クライアントの都合に合わせてスケジュールを組み直す作業自体が精神的なコストになっている。仕事の中身(AI導入支援)は嫌いではないが、時間の主導権を相手に握られる感覚が疲弊の原因になっている
- 複業の定型オペレーション: afflowの受注確認や投稿予約の設定など、判断を伴わない反復作業は、FIREの有無にかかわらずできれば今すぐにでも仕組み化・外注化したいと思っている部類だ
- 民泊の突発対応: ゲスト対応で予定外に時間を取られること自体が、FIRE後の時間の自由度と相性が悪い。民泊という事業そのものは続けたいが、突発対応の部分だけは仕組みで吸収したいと考えている
この切り分けをやってみて分かったのは、「事業をやめる/続ける」という単位で考えるより、「作業単位」で残す・手放すを決めた方が、FIRE後の生活の解像度が上がるということだ。事業ごと手放す判断は思い切りが必要だが、作業単位なら仕組み化や外注化という現実的な選択肢が見えてくる。
判断材料にしているチェックリスト
「続けたい働き方」と「やめたい働き方」を切り分けるために、私は実際に次の4つの問いを自分に投げている。今の仕事・作業を1つずつ思い浮かべながら答えると、感覚だけで判断するより整理がつきやすい。
- 報酬がゼロになっても続けたいか: 続けたいならKeep、続けたくないなら手放す候補
- 相手の都合に自分のスケジュールを合わせているか: 合わせている度合いが高いほど、FIRE後にストレス源になりやすい
- 判断を伴う作業か、反復するだけの作業か: 反復作業は仕組み化・外注化の対象、判断を伴う作業は自分で持ち続ける価値がある
- 外部からの反応(顧客・視聴者・ゲストなど)があるか: 反応がある働き方は、社会との接点として残す価値が高いと自分は感じている
この4つに答えると、私の場合はaerial-earth-studioと本業のFDEの一部業務がKeep側に、複業の定型オペレーションと稼働時間調整がDrop側に、はっきり分かれた。
まとめ
- FIREを「働くことからの完全な解放」と一括りにせず、続けたい働き方とやめたい働き方を分けて考えている
- 働き続けたい理由は「裁量権」「スキルの維持」「社会との接点」の3つで、お金のためという理由は含まれていない
- やめたい働き方は事業そのものではなく、稼働時間調整や定型オペレーションといった「作業単位」であることが多い
- 「報酬ゼロでも続けたいか」「相手の都合に合わせているか」「判断を伴うか」「外部からの反応があるか」の4問で、今の仕事・作業をKeep/Drop仕分けしている
次回は、このKeep側に残った働き方を前提に、FIRE後の時間配分をどう設計するかを書く。