マイクロ法人の維持費を比べるときは、合計額の前に「何を含めた数字か」を確かめたい。税金と会計ソフトだけの金額と、税理士報酬や社会保険料まで含む金額では、比較の条件が違う。

以前この記事では、維持費を年間63万円と紹介していた。しかし、その内訳には費用の全額と法人化による増加分が混在していた。役員報酬・社会保険料は対象外で、臨時費用と合計額の対応も不明確だった。63万円を維持費の総額や、法人化によって増える費用として使うのは適切ではなかった。

今回は、旧記事に載せていた内訳をもとに、何を数え直す必要があるかを整理する。次の表は旧記事の記載額をそのまま載せたもので、請求・契約で確かめた実額は、その後の「2026年10月に実額で確かめた4項目」にまとめた。

旧記事に金額を載せていた5項目

項目 旧記事の年額 集計の範囲
法人住民税均等割 70,000円 法人税割や法人事業税などは別枠
税理士報酬 495,000円 月額27,500円×12か月+決算申告165,000円
会計ソフト 35,000円 年額換算した利用料
法人カード年会費 0円 無料条件を満たした場合の集計
サブスクの法人向け上乗せ分 30,000円 利用料の全額ではなく、法人化による上乗せ分
記載額の合計 630,000円 上記5項目を足した金額

税金7万円と税理士報酬49.5万円だけで56.5万円。旧記事の合計63万円の約90%に当たる。以前の「半分近く」という説明は誤りだった。

2026年10月に実額で確かめた4項目

旧記事の5項目のうち4項目を、2026年10月に請求・契約・帳簿で確かめた。法人(Nogawa L.prince合同会社)は2021年設立、3月決算で、今は6期目に入っている。

項目 実額 確かめたもの
法人住民税均等割 70,000円 毎年の納付額
税理士報酬 495,000円 契約(月額27,500円×12か月+決算申告165,000円)
会計ソフト 59,136円(税込) マネーフォワード クラウドのスモールビジネスプラン(年払い)の2025年11月の請求。2023年・2024年の請求は39,336円(税込)
法人カード年会費 0円 三井住友カード ビジネスオーナーズ(ゴールド)。年間100万円以上の利用があり、今期の帳簿に年会費の支払いはない
4項目の合計 624,136円

会計ソフトは、旧記事の「年3.5万円」が2023・2024年の税抜額(35,760円)に当たり、2025年の更新で年53,760円(税抜)に上がった。同じ項目でも年によって金額が変わるので、維持費を書くときは「どの年の請求か」を添える。

旧記事にあった「サブスクの法人向け上乗せ分 年3万円」は、表から外した。個人向けのプランとの差額という考え方の数字で、帳簿からは確かめられなかったためだ。サブスクは法人契約にした分だけ費用が増えるが、その差額は集計していない。

旧記事の表で混ざっていたもの

旧記事の表には、費用の全額と上乗せ分が混在している。法人全体の必要資金を調べるなら、サブスクの元の利用料も確認する必要がある。また、個人事業でも会計ソフトや税理士費用を払っていた場合は、その全額が法人化による増加とは限らない。法人化の前後を比べるときは、同じ項目同士の差額を取る。

税額や契約金額を他社にも当てはめない

法人住民税均等割の7万円は、どの法人にも共通する金額ではない。所在地、資本金等の額、従業者数、事務所を置いた月数などを確認する。東京都主税局は、都内に事務所・事業所を持つ法人について、赤字でも申告・納付が必要で、均等割は資本金等と従業者数に応じて課税されると説明している。

税理士報酬も、記帳代行や決算申告を契約に含むかで比較条件が変わる。「月額顧問料」だけを12倍せず、決算時の報酬や追加の依頼を分けて確認したい。会計ソフトも、契約プランと支払周期をそろえて年額に換算する。

法人カードの0円は条件付き

三井住友カード ビジネスオーナーズ(ゴールド)の公式案内では、本会員の年会費は5,500円(税込)。年間100万円の利用で翌年以降の年会費が永年無料になる。対象取引や集計期間には条件があるので、実際に無料が適用されるかを確認して集計する。以前の「年間200万円以上」という説明は訂正する。

ポイントサイトの特典額は、継続的な維持費とは分けて考える。申込時のポイントを、その後も毎年受け取れる収入として年会費と相殺しない。

役員報酬と社会保険料は別枠で足す

役員報酬は法人から役員個人への支払いであり、社会保険料は保険制度への納付だ。「法人と個人の間でお金が動くだけなので、社会保険料は法人の外に出ない」という以前の説明は誤りだった。

日本年金機構の説明では、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主が給与などから差し引いた本人負担分と事業主負担分を合わせて納付する。厚生年金保険料は、事業主と本人が半分ずつ負担する。

法人の費用を集計するときは、役員報酬の総額と社会保険料の事業主負担分を分ける。役員報酬の総額に保険料の納付額全体を足すと、報酬から差し引いた本人負担分を二重に数えてしまう。

資金繰りでは、役員への差引支給額と保険料の納付額を、それぞれの支払日に置く。源泉所得税など、ほかに預かって納める金額があれば、その納付予定も加える。費用の合計と、口座から実際に出ていく時期は分けて管理する。

登記変更や証明書の費用も別に見込む

登記変更・証明書取得・印鑑の買い替えなどは、必要になったときの支出として別に見込む。「数年ごとに必ず登記変更があり、毎年数万円必要」と一律に置くのはやめ、予定されている変更の内容と費用を確認する。

証明書の手数料も一律600円ではない。法務省の案内では、書面請求の登記事項証明書は1通600円、印鑑証明書は1通500円。登記事項証明書が50枚を超える場合には加算があり、オンライン請求では受取方法によって金額が異なる。必要な証明書の種類・通数・請求方法で見積もる。

郵便転送や私書箱などの契約があるなら、その利用料も表に追加する。こうした費用を予備費として積む場合は、すでに払った実績額と区別しておく。旧記事では、登記関連の年割り額や小さい費用も固定コストに含めると書いていた。一方、金額が明記された5項目だけで63万円になるため、ほかの費用をどこに含めたのかは本文から確認できない。実績と見込み額を分けて、内訳と合計を照合し直す必要がある。

年額の比較と支払月の管理を分ける

年払いの費用を12で割ると、毎月の負担の大きさを比べやすい。ただし、その金額が毎月引き落とされるわけではない。

たとえば年12万円の契約なら、月あたりの予算は1万円でも、年払いする月には12万円の出金がある。資金繰り表には支払月に12万円を置く。数年に1回の支出も、積立額と実際の支払予定を別に記録する。

洗い出すときは、次の順序で確認すると集計範囲を追いやすい。

  1. 直近1年分の口座・カード明細、契約書、納税・保険料の通知を集める。
  2. 税金、税理士、口座・カード・ツール、報酬・社会保険料、臨時費用に分ける。口座のカード引落額とカード明細を両方足さない。
  3. 費用ごとに「集計対象・年額・支払月」を記録する。対象外にしたものも、その理由を残す。
  4. 年額の比較表とは別に、入金予定と実際の支払予定を資金繰り表へ置く。

作業時間は取引件数や資料の整理状況によるため、「5時間で終わる」とは言い切らない。最初に作った表を決算や契約更新の際に見直す形なら、前回から増えた費用も追いやすい。

まとめ

  • 旧記事の5項目を足すと63万円になるが、費用全額と増加分が混在し、臨時費用との対応も不明確。維持費総額としては使えない。
  • 旧記事の数字では、税金7万円と税理士報酬49.5万円の合計は56.5万円。63万円の約90%になる。
  • 2026年10月に実額で確かめた4項目(均等割・税理士報酬・会計ソフト・カード年会費)の合計は624,136円。会計ソフトは2025年の更新で上がっており、年によって変わる。
  • 法人全体の支出や法人化前後の差額を見るなら、集計対象をそろえ直す。
  • 年額を月割りした予算と、口座から出金される月を分けて管理する。

参考資料

制度・手数料・カード条件は2026年10月7日確認。

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