私はまだ本業のFDE(企業のAI導入支援)を辞めていない。複業4事業とマイクロ法人を並行運用しながらFIREを目指しているが、「いつ本業を手放すか」を考えたとき、資産額の到達だけを基準にするのは危ういと思っている。今回は、本業を辞める判断をする前に、自分の中で潰しておきたいと考えている5つのリスクを整理する。まだ全部を潰し切れているわけではない。現時点の棚卸しの記録だ。

目次

なぜ「資産額が貯まったら辞める」だけでは足りないのか

FIREの目標設定というと、多くの場合「資産が生活費の25倍に達したら辞める」といった、資産額を唯一の基準にする考え方が中心になる。私も資産形成の進捗は追っているが、それだけを基準に本業を辞める決断をするのは自分には合わないと感じている。

理由は単純で、資産額は「積み上がったかどうか」しか測れない指標だからだ。本業を辞めた後の収入構造がどれだけ脆いか、生活のどこに本業が見えない形で依存しているか、といったリスクは資産額に反映されない。複業4事業を同時並行で回している今の自分の状況だと、なおさらこの見落としが起きやすい。本業を辞めるタイミングを考えるなら、資産額とは別の軸で「辞めても崩れない状態か」を点検する必要がある、というのが今回の出発点だ。

リスク1: 複業の収入が「本業ありき」で成立していないか

複業4事業(storeforge、aerial-earth-studio、afflow、民泊)は、それぞれ本業とは独立した収入源のつもりで動かしている。だが実際に棚卸しをしてみると、本業があるからこそ成立している部分が思いのほか多いことに気づいた。

例えば、本業の収入があるからこそ、複業の投資フェーズ(広告費や機材投資、赤字期間の許容)を焦らず続けられている。本業を失った瞬間に「複業の育成にかけられる時間的・資金的余裕」がなくなり、複業自体の成長が止まる可能性がある。これは複業の月商や利益額の問題ではなく、複業の「土台」が本業の安定収入に乗っている、という構造の問題だ。

自分の場合の判断材料は、複業4事業合計の月間利益が、生活費の何割をカバーしているかという比率だ。現状はまだ15%程度で、本業収入への依存度は高い。この比率をどこまで引き上げてから本業を辞めるかは、まだ自分の中で確定した基準を持てていない。

リスク2: 社会的信用が本業の肩書きに紐づいていないか

フリーランスエンジニアという肩書きは、賃貸契約、法人カードの与信、融資審査など、生活と事業の両面で「信用」として機能している場面が多い。本業を辞めてマイクロ法人と複業だけの状態になったとき、この信用がどう変化するかを事前に確認していない。

実体験として、マイクロ法人(Nogawa L.prince合同会社)を設立した際、法人単体での実績がまだ薄く、個人の職歴や本業の継続性が審査材料として補完的に機能した場面があった。本業を辞めた後にこの補完がなくなったとき、法人単体の信用でどこまで同じ与信が得られるかは未検証だ。辞める前に、法人単体の決算実績を最低でも複数期分積んでおく、あるいは辞める前に必要な契約や審査を前倒しで済ませておく、といった対策が必要だと考えている。

リスク3: 複業の中に「本業のスキルの延長」で回っているものがないか

複業4事業の中には、本業のFDEで培ったエンジニアリングスキルをそのまま流用しているものがある。afflowのボット開発や、各事業の業務自動化はその典型だ。これは強みである一方、本業を辞めることで技術のインプット機会が減った場合、複業側のスキルの鮮度が落ちていくリスクを内包している。

本業のクライアントワークは、最新のツールや業界動向に触れ続ける強制力として機能している面がある。この強制力を失った後、自分で意識的に学習機会を作れるかどうかは、実際に本業を辞めてみないと分からない部分もある。今のところの対策としては、複業側の技術選定や学習を本業に依存させず、複業単体でも新しい技術に触れる機会を意図的に組み込むようにしている段階だ。

リスク4: 家族の生活防衛ラインが「複業込み」で計算されていないか

家計の生活防衛資金は、本業収入がゼロになった場合を想定して積んでおくのが基本だと理解している。だが自分の場合、無意識のうちに「複業の収入もある程度入ってくる前提」で防衛ラインを緩く見積もっていないか、という点は改めて点検が必要だと感じている。

複業4事業は0→1フェーズにあり、月ごとの収入の波が大きい。本業を辞めた直後に複業の収入が落ち込む月と重なった場合、生活防衛資金が想定より早く目減りするシナリオは十分あり得る。自分の場合、生活防衛資金の必要月数は6ヶ月分としているが、この数字は「複業収入がゼロだった場合」を基準に置き直すべきかどうか、まだ結論を出せていない。

リスク5: 辞めた後の「意思決定の速度」が保てるか

最後は数字では測りにくいリスクだ。本業のクライアントワークには、否応なく期限とレビューのプロセスがある。この外部からの締め切りが、実は自分の作業スピードや意思決定の速度を支えている側面があると感じている。

複業やマイクロ法人の業務は、締め切りを自分で設定する必要がある分、緊張感が緩みやすい。本業という「他者が設定する締め切り」がなくなったとき、複業4事業の意思決定と実行のペースを自分だけで維持できるかは未知数だ。これは資産形成の進捗とは別軸の、自分自身の働き方の設計の問題として捉えている。

まとめ

  • 本業を辞める判断は資産額の到達だけでなく、辞めても崩れない構造になっているかという別軸の点検が必要だと考えている
  • 潰しておきたい5つのリスクは「複業収入の本業依存度」「社会的信用の肩書き依存」「複業スキルの本業依存」「生活防衛ラインの見積もりの甘さ」「意思決定速度の自走力」
  • 現時点でどれも完全には潰し切れておらず、特に複業収入の本業依存度(現状15%)は最も大きい未解決課題
  • これらは自分の事業構成(本業1つ+複業4つ+マイクロ法人)に固有の棚卸しであり、一般化した「辞めどきの基準」ではない

次回は、この5つのリスクのうち「複業の収入が本業ありきで成立していないか」を掘り下げ、複業4事業の収入構造を実際の数字で点検した記録を書く予定だ。

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