「なぜ個人事業だけで続けずマイクロ法人を作ったのか」で、法人化の意思決定プロセスは書いた。今回はその続きで、実際に個人事業とマイクロ法人(Nogawa L.prince合同会社)を両方運用している今、日々の業務をどういう基準で振り分けているかを書く。

先に結論を書くと、私の場合は「誰の名前で契約するか」を最上位の判断基準にし、そこから逆算して請求・経理・ツール管理までを分けている。事業の種類で機械的に振り分けているわけではなく、契約の主体という1点をまず固定し、残りはそれに合わせて後追いで整理した、という順序だ。

目次

振り分けの起点は「契約の主体」

個人事業と法人、どちらの業務にするかを決めるとき、最初に見るのは作業の中身ではなく「誰が契約の当事者になるか」だ。

本業のFDE(企業のAI導入支援)は、契約時点から個人事業として結んでいる案件が多い。専門スキルへの信頼が契約の土台になっている仕事なので、個人の名前のまま続けている。一方、複業側で法人名義にしている事業は、契約や取引の相手が「事業体」として向き合うことを前提にしている場面が多く、法人の代表社員として契約する形にしている。

ここで大事なのは、同じ「エンジニアリングの仕事」であっても、契約の相手が個人の専門性を評価しているか、事業体としての実体を評価しているかで振り分け先が変わるということだ。作業内容が似ていても、契約主体が違えば帳簿も請求書の発行元も別になる。

実務で起きる境界線の揺れとその対処

とはいえ、実際にはきれいに割り切れない場面が定期的に出てくる。

  • 本業の中で法人向けの相談が来たとき: FDEの案件を進める中で、相手先が法人格を求める場面が出ることがある。この場合は、個人事業として受けた案件の延長で対応するのか、法人として別契約を結び直すのかを都度判断している。判断基準は「その相談が本業の延長線上の専門スキル提供か、事業としての新しい取引か」で、前者なら個人事業のまま、後者なら法人契約に切り替える
  • 複業の初期検証段階: storeforgeや民泊のように0→1の検証段階にある事業は、法人名義を使うかどうかを事業ごとに決めている。法人の器を使うと管理コスト(法人口座の管理、経理処理など)が発生するため、検証がごく小規模なうちは個人の範囲で動かし、事業として形になった段階で法人側に寄せる、という順番にしている事業もある
  • 経費の按分: 自宅の一角を作業スペースとして使っているなど、個人と法人の両方に関わる支出は、実態に応じて按分している。ここは自分の場合の運用として、按分の考え方を税理士に確認しながら進めている段階で、1万円以下の細かい支出は按分せず主たる事業側にまとめて寄せる、という単純なルールに落ち着いている

境界線が揺れる場面では、「後から説明できるかどうか」を自分の中の基準にしている。契約の実態と請求・経理の処理が一致していれば、揺れること自体は問題ではないと考えている。

ツールと管理体制も契約主体に合わせて分離

業務の振り分けが決まった後は、管理ツールも極力分けるようにしている。

  • 請求書発行・帳簿は個人事業用と法人用で別々のフローを使っている
  • 銀行口座は個人事業用・法人用を完全に分け、事業の入出金がどちらの口座を通ったかで契約主体を確認できるようにしている
  • タスク管理(GitHub Projects)は事業ラインごとにラベルを分けているが、これは「複業ログ」で書いた並行運用の管理方法と共通の仕組みで、個人事業側の案件と法人側の案件を同じボード上でラベルだけ変えて見分けている

ツールを分ける一番の理由は、後から「これはどちらの契約だったか」を確認する作業を減らすためだ。振り分けの判断は最初の契約時点で1回すればよく、その後の実務(請求、経理、進捗管理)は分けたレーンをなぞるだけで済むようにしている。これができていないと、案件が増えるたびに毎回「これはどっちだったか」を思い出す作業が発生し、すきま時間の運用では特にコストが大きい。

まとめ

  • 個人事業と法人の振り分けは、作業内容ではなく「契約の主体」を最上位の基準にしている
  • 本業(FDE)は個人の専門スキルへの信頼が契約の土台のため個人事業のまま、複業の一部は事業体としての取引が前提のため法人名義にしている
  • 境界線が揺れる場面(法人向け相談、検証初期段階、経費按分)では「後から説明できるか」を基準に都度判断している
  • 請求・口座・タスク管理のツールを契約主体ごとに分けることで、判断コストを契約時点の1回に閉じ込めている

次回は、複業4事業のうち法人名義で動かしているものについて、法人の器を使うことで実際に何が変わったかを具体的に書く予定だ。

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