マイクロ法人のデメリットは何か。設立のメリットを解説する情報は多いが、実際に1期目(2022年3月期)の決算を終えて「ここは想定より重かった」と感じた点を、自分の実数で整理しておく(法人は2021年設立で、今は6期目に入っている)。

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Nogawa L.prince合同会社を本業(個人事業のFDE)と並行して運営している立場からの記録であり、法人化を検討している人が「自分の場合はどうか」を判断する材料になればと思って書く。

先に結論を書くと、デメリットは大きく5つあった。年間63万円前後の維持費、役員報酬が期中に変えられないこと、法人か個人かを都度判断する細かい手間、設立実務のつまずき、節税策の継続負荷だ。それでも現時点で法人を維持しているのは、この5つを「法人という器から得ている便益とのバランス」で許容できていると判断しているからで、その判断基準も最後に書く。

デメリット1: 何もしなくても年間63万円前後の維持費が出ていく

一番実感が湧きにくく、一番確実に効いてくるのが固定費だ。役員報酬や社会保険料のような「法人と個人の間でお金が動くだけの支出」を除いて、純粋に法人という器を維持するために外部へ出ていくコストは、自分の場合で年間63万円前後になった。

内訳の大きいところは、赤字でも必ず発生する法人住民税均等割の70,000円と、顧問税理士への年間報酬495,000円(月額顧問料27,500円×12か月+決算申告時165,000円)。ここに会計ソフトの法人プラン差額、法人向けサブスクの上乗せ分、登記簿謄本・印鑑証明の取得費用などが積み上がる。個人事業主時代にはほぼゼロだった費用が、法人化によって新たに発生した形だ。詳しい内訳と自分で洗い出す手順は維持費の記事に書いた。

デメリット2: 役員報酬を期中に変えられない

個人事業では、売上が入ればそのまま自分の可処分になる。法人では、役員報酬は期首に決めた金額(自分の場合は月23,000円)を毎月定額で支払う必要があり、期中に業績が良くても悪くても基本的に変更できない。変更すると損金算入できなくなるケースがあるためだ。

この「期中は固定」という制約を、自分は決算間際になって数字で突きつけられるまで体感として理解できていなかった。複業側の売上は月によって波があるため、法人口座の残高が薄い月に固定の役員報酬と固定費が重なるタイミングがあり、資金繰りとしてヒヤッとする場面が1期目に1度あった。法人の資金繰りは個人事業とは別のロジックで見る必要がある、というのは1期目を回して初めて得られた学びだった。

1期目は、法人の数字の確認を月次の会計ソフトの自動集計に任せきりにしていた。「数字は自動で見えているはず」という前提が、この資金繰りの見誤りにも、次に書く経費区分の揺れにも共通する原因だったと考えている。そこで2期目からは、月末に15分だけ「個人事業と法人の数字を並べて見る時間」をカレンダーに固定した。時間を増やすのではなく、決まったタイミングで決まった確認をする形にしたのは、すきま時間で回している以上それしか続かないからだ。役員報酬の決め方の手順は役員報酬の記事に書いている。

デメリット3: 「法人か個人か」の判断が毎回発生する

法人化して一番想定外だったのは、登記や決算のようなイベント的な手続きではなく、日々の細かい判断の積み重ねだった。

個人事業と法人の二刀流になると、1つの支払いのたびに「これは法人の経費か、個人事業の経費か、プライベートか」を考える必要が出てくる。1回あたりは数分でも頻度が高く、すきま時間に差し込みにくい。取引先から届く請求書や契約書の宛名が想定と違う名義になっていることも何度かあり、気づかずに処理すると後で経費の帰属を修正する手間が発生する。法人口座の開設や法人カードの申込のたびに登記簿謄本・印鑑証明を求められ、個人事業なら本人確認書類だけで済んでいたものが2段階になる点も、地味に重い。

この判断ブレは決算にも跳ね返った。1期目は、両方で使うツール費用を月によって個人側と法人側にバラバラに計上していて、決算時にまとめて見返して初めて一貫性のなさに気づいた。金額的なインパクトは3万円程度だったが、税理士に「なぜこの月だけ法人側なのか」を説明できない箇所があり、確認に想定より時間を取られた。

原因は、経費区分のルールを事業年度が始まる前に文書化していなかったことだ。設立時点では「複業は法人、本業は個人事業」という大枠しか決めておらず、両方にまたがる支出をどちらに寄せるかの細則がなかった。細則がない状態で期中に都度判断すると、判断する自分自身の基準がぶれる。繁忙期に「とりあえずどちらかに計上して後で直せばいい」と処理した月が、そのまま決算のまとめ作業を増やした。

そこで2期目の期首に、当時のルールとして次の3つを文書化した。

  • 按分のルール(当時): 両方にまたがる支出は、法人側の売上構成比に応じて按分する固定ルールにして、月ごとの裁量判断をなくした
  • 計上のタイミング: 月末に必ずその月の按分処理を終わらせ、翌月に持ち越さない
  • 証憑の保存先: 個人事業分と法人分で、レシート・請求書の保存フォルダを最初から分ける

按分のルールはその後見直し、今は法人の業務に使う分だけを法人で払い、個人事業で使う分は個人で払っている。法人が経費(損金)にできるのは法人の業務に関係する支出だけ、という原則に沿わせた形だ。ルールの中身は自分の事業構成に固有のもので、人に勧める話ではない。ただ「期首にルールを文書化しておく」という進め方は、二刀流の運用で再現性のある反省だった。具体的な手間と対処は手間がかかる実務の記事にまとめている。

デメリット4: 設立実務は「オンラインで簡単」では終わらなかった

合同会社と株式会社のどちらにするかの判断は、資金調達より事業の切り分けを優先する自分の目的では早期に合同会社へ収束した。時間を取られたのは形態選びではなく、その後の設立実務だった。

つまずいたのは3点。定款の事業目的に何を含めて何を含めないかの線引き、資本金をいくらにするかの相場感(最終的に10万円にしたが、適正だったかは今も判断がつきかねている)、そして登記後の法人口座開設に想定以上の時間がかかったことだ。登記自体はオンラインの手続きで完了したが、その前後の付随作業の方が重かった。自分の場合は定款・設立書類の作成にマネーフォワード クラウド会社設立を使い、事業目的の書き方に迷った点は質問形式で入力していく画面のおかげで進めやすかったが、口座開設は複数行に同時申請するくらいの余裕を持っておけばよかったと後から思った。経緯は合同会社の設立費用と選び方の記事に書いた。

デメリット5: 節税策は「知っている」だけでは効かず、続ける手間がかかる

法人を持つと、役員報酬の設定、経営セーフティ共済、旅費規程による日当、社宅制度など、節税の選択肢は個人事業の頃より格段に増える。ただし「制度として有利かどうか」と「自分が運用し続けられるかどうか」は別問題だった。

節税策は一度設定して終わりではなく、記帳や書類整備、年ごとの見直しという継続的な作業を伴う。この継続コストを見落として制度だけで選ぶと、初年度はできても翌年以降が回らなくなる。そこで自分は、採否を次の3つで決めている。

  • 単発で完結するか、継続的な管理が要るか: 役員報酬の年額決定や共済の掛金設定のように、一度設定すれば自動で処理され、年1回の見直しで済むものは採用しやすい。旅費規程の日当運用や細かい経費区分の作り込みのように、毎月・毎回の判断や証憑の整理が発生するものは、節税効果があってもすきま時間に差し込みにくい
  • 時給換算で見合うか: 節税額を、その運用にかかる時間で割って比べる。例えば年間の節税額が6万円で、運用に月1時間かかるなら、年12時間で6万円、時給換算で5,000円になる。この数字を、本業の時間単価や、その時間を複業や子育てに回した場合と比べる。逆に、節税額がそれほど大きくなくても、一度設定すればほぼ手間がかからない施策は、時給換算では明らかに有利になる
  • 「やらない」も選択肢に入れる: 「節税できるのにやらないのはもったいない」という空気は感じやすいが、本業・複業・子育てを同時に回している以上、すきま時間という制約が先にある。実際、節税効果を理解した上であえて採用しなかった施策が複数あり、その判断も記録に残している

自分が使っているのは、法人で加入している経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)だ。掛金は毎月口座から自動で引き落とされるので、初回の申込と掛金の設定さえ済ませれば、日々の判断は発生しない。ただし掛金を損金に入れるには、確定申告書に損金算入の明細書を付ける必要がある(租税特別措置法第66条の11第3項)ので、決算のときに1つ手続きが増える。なお小規模企業共済は、法人を作る前から個人事業主として加入している。どちらの立場で入るかの経緯は小規模企業共済の記事に書いた。

それでも法人を維持している理由

ここまでのデメリットを並べると、「なぜ続けているのか」という話になる。

自分の場合、法人化の動機は売上規模ではなく事業構造の切り分けだった。本業(FDE)は個人事業に残し、複業の一部を法人に持たせることで、複業を第三者と契約できる形にできること、事業ごとの採算を法人という単位で切り出して見られることが、法人という器から得ている便益になっている。年間63万円前後の固定費は、その便益に対する「場所代」として現状は許容している。

ただしこれは固定の結論ではない。複業の売上規模がこの固定費に見合わない時期が長く続くようであれば、法人を維持する判断自体を見直す材料になると考えている。デメリットを「設立前に知っておくべきこと」として並べたのは、法人化を勧めるためでも止めるためでもなく、自分と同じように「本業を持ちながら複業の一部を法人化する」構成を検討している人が、固定費・資金繰り・判断の手間を自分の数字に置き換えて考えられるようにするためだ。

まとめ

  • マイクロ法人のデメリットとして1期目に実感したのは、年間63万円前後の維持費、役員報酬の期中固定、法人か個人かの都度判断、設立実務のつまずき、節税策の継続負荷の5つ
  • 一番確実に効くのは固定費、一番想定外だったのは日々の細かい判断の積み重ね
  • それでも維持しているのは、事業の切り分けという便益とのバランスで許容できていると判断しているからで、売上規模が固定費に見合わない時期が続けば見直す

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