「年末調整の書類に、ふるさと納税を書く欄が見当たらない」「年末調整をすれば、ふるさと納税の分も戻ってくるのでは」。 秋になって年末調整の書類が配られると、こうした疑問を持つ人は少なくありません。
先に答えを書くと、ふるさと納税は年末調整では控除されません。会社員が控除を受けるには、ワンストップ特例か確定申告のどちらかが必要です。
この記事では、国税庁・総務省の資料(2026年10月8日に確認)をもとに、次の4つを整理します。
- 年末調整でふるさと納税が控除されない理由
- 会社員が控除を受ける2つの方法と、どちらを選ぶか
- ワンストップ特例が無効になる落とし穴(医療費控除・副業)
- 申告を忘れたときの直し方
この記事の結論(先に3点)
- 年末調整ではふるさと納税は控除されない: 年末調整で差し引く控除は所得税法で決まっていて、寄附金控除は入っていない。年末調整の書類にも寄付金の項目はない
- 方法はワンストップ特例か確定申告の2つ: 確定申告が不要な会社員で、寄付先が5団体以内ならワンストップ特例が使える。それ以外は確定申告をする
- 確定申告や住民税の申告をすると、ワンストップ特例は無効になる: 医療費控除の申告や、副業の住民税の申告でも無効になる。その場合は、ワンストップ特例を申請した分も含めて確定申告する
適合する読者と限定事項
- この記事が役立つ人
- 年末調整の書類を書きながら、ふるさと納税をどこに書くか探している会社員
- ふるさと納税と医療費控除の両方がある人
- 副業があって、ワンストップ特例を使えるか迷っている人
- この記事で扱わないこと
- 控除上限額の計算(各サイトのシミュレーションや税理士に確認してください)
- 確定申告書の画面ごとの操作手順
- 制度の記述は、2026年10月8日に確認した国税庁・総務省・e-Govの法令の情報にもとづきます
年末調整でふるさと納税が控除されない理由
年末調整は、会社が1年分の給与の所得税を精算する手続きです。ここで差し引ける控除は、所得税法第190条で決まっています。
条文で年末調整の対象として挙げられているのは、次の控除です。
| 年末調整で差し引く控除 | 年末調整では差し引かない控除 |
|---|---|
| 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除 | 寄附金控除(ふるさと納税) |
| 障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除 | 医療費控除 |
| 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除 | 雑損控除 |
| 基礎控除 など |
ふるさと納税の寄附金控除は、医療費控除と同じく年末調整の対象外です。国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」を見ても、会社が受け取る申告書は扶養控除等申告書や保険料控除申告書などで、寄付金の控除のための書類はありません。
「保険料控除申告書に書く欄がある」は誤解
年末調整で出す「保険料控除申告書」は、名前のとおり保険料と掛金のための書類です。扱うのは、生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金で、寄付金を書く項目はありません。
ふるさと納税の受領証明書を会社に出しても、年末調整には反映されません。
「年末調整で戻ってくる」も誤解
年末調整で戻ってくるお金(還付)は、払いすぎた給与の所得税の精算分です。ふるさと納税の分は含まれません。
ふるさと納税の控除は、次の形で受けます。
| 方法 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 確定申告 | その年の所得税から控除され、還付される | 翌年度の住民税が減る |
| ワンストップ特例 | 控除されない(現金は戻らない) | 所得税の分も含めて、全額が翌年度の住民税から減る |
総務省の「ふるさと納税の流れ」でも、ワンストップ特例の場合は控除額の全額が「翌年度の住民税の減額という形で控除」されると説明しています。ワンストップ特例を使った人は、お金が振り込まれるのではなく、翌年6月以降の住民税が少なくなります。
会社員が控除を受ける2つの方法
方法1:ワンストップ特例(確定申告が不要な人向け)
国税庁のタックスアンサー(No.1155 ふるさと納税)と総務省の説明では、ワンストップ特例を使えるのは次の両方に当てはまる人です。
- 確定申告が不要な給与所得者など
- 1年間の寄付先が5団体以内
寄付先の自治体に申請書を出します。多くの自治体は、提出期限を寄付した翌年の1月10日必着と案内しています。一部の自治体では、マイナンバーカードを使ったオンライン申請もできます。
方法2:確定申告(それ以外の人)
次のどれかに当てはまる人は、確定申告でふるさと納税を申告します。
- 6団体以上に寄付した
- 医療費控除など、ほかの理由で確定申告をする
- 副業などで確定申告が必要
年末調整を受けた会社員が確定申告をする場合は、会社から受け取る源泉徴収票の数字を使って申告書を作ります。e-Taxで送る場合は、源泉徴収票の添付や提示は不要です。マイナポータル連携を使えば、源泉徴収票や寄付の証明書のデータを自動で取り込めます。
確定申告の期限は翌年3月15日ですが、所得税を払いすぎていて還付を受けるだけの申告(還付申告)なら、国税庁のタックスアンサー(No.2030 還付申告)によると「その年の翌年1月1日から5年間提出することができます」。確定申告の期間を待たずに出すこともできます。
ふるさと納税の締め切り全体は、ふるさと納税は2026年10月から何が変わった? 今年分はいつまでに寄付するかにまとめています。
ワンストップ特例が無効になる落とし穴
ここが、いちばん間違えやすいところです。
落とし穴1:医療費控除で確定申告をすると無効になる
国税庁のNo.1155では、「確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となる」とされています。
たとえば、ワンストップ特例を申請したあとで、医療費控除のために確定申告をしたとします。このとき、申告書にふるさと納税を書かないと、ふるさと納税の控除が受けられなくなります。確定申告をするなら、ワンストップ特例を申請した寄付も含めて、1年分をすべて書きます。
落とし穴2:副業の住民税の申告でも無効になる
副業の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は原則として不要です。ただし、住民税には20万円の基準がありません。所得税の確定申告をしない場合は、副業の所得について市区町村へ住民税の申告をする必要があります(横浜市などのよくある質問)。
ワンストップ特例の法律上の根拠である地方税法附則第7条では、住民税の申告書を出したときも、ワンストップ特例の申請は「なかつたものとみなす」とされています。副業の住民税の申告をする人は、その申告書にふるさと納税も書く必要があります。
なお、国税庁の「暮らしの税情報」によると、住民税の申告だけでは所得税の寄附金控除は受けられません。所得税の控除も受けたいなら、確定申告をします。
落とし穴3:還付申告をするなら、20万円以下の副業所得も申告する
「副業の所得が20万円以下なら申告しなくていい」は、所得税の確定申告が不要になる場合の話です。国税庁の質疑応答(No.1900)では、医療費控除などで還付申告をする場合は「その20万円以下の所得についても申告することが必要になります」とされています。
ふるさと納税の控除を受けるために確定申告をするなら、20万円以下の副業の所得も含めて申告します。副業の確定申告が必要になる基準は、副業の確定申告はいくらから必要かで整理しています。
申告を忘れた・書き漏れたときの直し方
- ワンストップ特例を申請したのに、確定申告でふるさと納税を書き忘れた: 国税庁のNo.1155によると、「更正の請求」で寄附金控除を追加できます。所得税額が変わらない場合は更正の請求ができないため、住んでいる市区町村に相談します
- ワンストップ特例の申請が間に合わなかった: 確定申告(還付申告)でふるさと納税を申告します。還付申告は翌年1月1日から5年間出せます
2026年分の年末調整で変わること
2026年分(令和8年分)の年末調整では、所得税の基礎控除などが引き上げられます。国税庁の「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」によると、改正は令和8年12月1日から施行され、11月までの給与の源泉徴収は変わらず、12月の年末調整でまとめて精算します。
この改正で、所得税の金額は人によって変わります。ふるさと納税の上限の目安が変わる可能性もありますが、金額の影響は所得や家族構成で違うため、この記事では数字を出しません。各サイトのシミュレーションで、2026年分の条件に対応しているかを確かめてください。
私の場合:年末調整を受けていても、ふるさと納税は確定申告
私は自分のマイクロ法人から役員報酬を受け取っていて、その役員報酬は年末調整をしています(マイクロ法人の年末調整のやり方)。一方で、個人事業もあるため、毎年確定申告をしています。
そのため、ふるさと納税はワンストップ特例を使わず、確定申告で1年分をまとめて申告しています。入力はマネーフォワード クラウド確定申告で行っています。副業・個人事業がある人の上限の決め方は、副業・個人事業主のふるさと納税はいくらまでかに書きました。
うまくいかなかったこと・この記事で確かめていないこと
- 「年末調整では寄附金控除を受けられない」と一文で言い切った国税庁の文書は見つけられなかった。根拠は所得税法第190条と、国税庁の年末調整の手引きにしている
- ワンストップ特例の「翌年1月10日必着」は、自治体の案内にもとづく。法律で1月10日と決まっているのは、住所などが変わったときの届出の期限
- 期限を過ぎて届いたワンストップ特例の申請の扱いは、自治体によって違う可能性があり確かめていない
- 2026年分(2027年に出す)確定申告書の様式と、確定申告の受付期間は、まだ確認していない
まとめ
- ふるさと納税は年末調整では控除されない。年末調整の控除は所得税法第190条で決まっていて、寄附金控除は入っていない
- 控除を受ける方法は、ワンストップ特例(確定申告が不要な会社員で5団体以内)か、確定申告のどちらか
- 確定申告や住民税の申告をすると、ワンストップ特例は無効になる。医療費控除や副業の申告のときは、ふるさと納税も一緒に書く
- 還付申告をするなら、20万円以下の副業の所得も申告する
- 書き忘れたら更正の請求、ワンストップ特例が間に合わなければ確定申告(還付申告は5年間出せる)
参照した資料(2026年10月8日確認)
- e-Gov法令検索 所得税法 第190条(年末調整):https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2026/pdf/nencho_all.pdf
- 国税庁 タックスアンサーNo.1155 ふるさと納税(寄附金控除):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.2030 還付申告:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 国税庁 No.1900 質疑応答「確定申告を要しない場合の意義」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm
- 国税庁「暮らしの税情報(令和8年度版)寄附金を支出したとき」:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_3.htm
- 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」:https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/pdf/0026005-024.pdf
- 総務省「ふるさと納税の流れ」:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/procedure.html
- 横浜市 税金のよくある質問(給与以外の所得の申告):https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/faq/answer2.html