「ふるさと納税はワンストップ特例を申請済み。でも今年は医療費が多かったので、医療費控除も受けたい」。 この組み合わせは、毎年のように迷う人が出る典型的なパターンです。

先に答えを書くと、医療費控除とふるさと納税は併用できます。ただし、医療費控除のために確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。ふるさと納税も確定申告に含めないと、控除を受けられません。

この記事では、国税庁・総務省の資料と法令(2026年10月8日に確認)をもとに、次の4つを整理します。

  • 医療費控除の計算のしかた
  • 確定申告でワンストップ特例が無効になる理由と、申請済みのときの対応
  • 医療費控除でふるさと納税の上限が下がる仕組み
  • 確定申告で両方を入力するときの書類と書き方

この記事の結論(先に3点)

  1. 併用はできるが、ワンストップ特例は無効になる: 医療費控除のために確定申告をすると、ワンストップ特例の申請はなかったものとされる。ふるさと納税も含めて1年分を確定申告で申告する
  2. 医療費控除を受けると、ふるさと納税の上限の目安は少し下がる: 住民税の所得割が下がり、その2割で決まる上限も下がるため。上限ぎりぎりまで寄付する人は注意する
  3. 確定申告では第二表の住民税欄まで書く: 「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」を書かないと、住民税で控除されないことがある。書き忘れたら更正の請求で直せる

適合する読者と限定事項

  • この記事が役立つ人
    • ふるさと納税をしていて、医療費控除も受けたい人
    • ワンストップ特例を申請したあとで、医療費控除のために確定申告をすることになった人
  • この記事で扱わないこと
    • 自分の控除上限額の具体的な金額(各サイトのシミュレーションや住んでいる市区町村に確認してください)
    • 医療費控除の対象になるかの個別の判断
  • 制度の記述は、2026年10月8日に確認した国税庁・総務省・e-Govの法令の情報にもとづきます

医療費控除の計算のしかた

国税庁のタックスアンサー(No.1120 医療費を支払ったとき)によると、医療費控除の金額は次の式で計算します(最高で200万円)。

(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補てんされる金額)− 10万円

  • 10万円の部分: その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5パーセント
  • 保険金などで補てんされる金額: 入院費給付金や高額療養費など。その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引き、引ききれなくても他の医療費からは差し引かない
  • 対象の期間: 1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費。自分のほか、生計を一にする配偶者や親族の分も含められる

対象になるもの・ならないもの

国税庁のNo.1122によると、代表的なものは次のとおりです。

対象になる 対象にならない
医師・歯科医師の診療や治療の費用 健康診断の費用、医師への謝礼(原則として)
治療のための医薬品(風邪薬など) ビタミン剤など、予防や健康増進のための医薬品
通院のための電車・バス代 タクシー代(電車やバスが利用できない場合を除く)
自家用車で通院するときのガソリン代・駐車場代

セルフメディケーション税制とはどちらか一方

ドラッグストアで買う一部の市販薬(特定一般用医薬品等)については、「セルフメディケーション税制」という特例もあります。国税庁のNo.1129によると、購入費から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)が控除の対象です。健康診断や予防接種など一定の取組をしていることが条件です。

通常の医療費控除とはどちらか一方を選ぶ仕組みで、国税庁は「これらのいずれかの適用を選択した後、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできません」としています。

確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になる

国税庁と法令の扱い

国税庁のタックスアンサー(No.1155 ふるさと納税)では、確定申告をする人は「ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となる」としています。医療費控除や雑損控除を受けるために確定申告や住民税の申告をする人も含まれる、と明記されています。

法令では、地方税法附則第7条第13項で、次のような場合にワンストップ特例の申請は「なかつたものとみなす」とされています。

  • その年の所得税について、確定申告が不要な人の規定(所得税法第121条)の適用を受けないことになったとき(=確定申告をしたとき)
  • 住民税の申告書を出したとき
  • 寄付先が5団体を超えたとき

ワンストップ特例を申請済みのときの対応

ワンストップ特例を申請していても、医療費控除のために確定申告をするなら、申請した分も含めて1年分のふるさと納税をすべて確定申告に書きます。

  • 書き忘れて確定申告した場合: 国税庁のNo.1155によると、「更正の請求」で寄附金控除を追加できる
  • 寄附金控除を入れても所得税額が変わらない場合: 更正の請求ができないため、住んでいる市区町村に相談する(同じくNo.1155)

ふるさと納税と申告の関係は、ふるさと納税は年末調整で控除できる? ワンストップ特例が無効になる落とし穴でも整理しています。

医療費控除で、ふるさと納税の上限が下がる仕組み

ふるさと納税の上限は「住民税所得割の2割」で決まる

総務省の「税金の控除について」によると、ふるさと納税の控除は次の3つに分かれます。

控除 計算式
所得税からの控除 (ふるさと納税額−2,000円)×所得税の税率(対象は総所得金額等の40%が上限)
住民税からの控除(基本分) (ふるさと納税額−2,000円)×10%(対象は総所得金額等の30%が上限)
住民税からの控除(特例分) (ふるさと納税額−2,000円)×(100%−10%−所得税の税率)

このうち特例分は、住民税所得割額の2割を超えない場合に上の式で決まります。2割を超える場合は、特例分は「住民税所得割額×20%」で頭打ちになり、総務省は「実質負担額は2,000円を超えます」と説明しています。いわゆる「上限」は、この2割で決まります。

医療費控除は住民税にもあり、所得割を下げる

医療費控除は所得税だけでなく住民税にもあります。医療費控除を受けると、住民税の課税所得が下がり、所得割も下がります。所得割が下がれば、その2割で決まるふるさと納税の上限も下がります。

総務省の式から計算すると、税率の区分が変わらない限り、上限の目安はおおよそ次の分だけ下がります。

医療費控除額 × 10%(住民税) × 20% ÷(90% − 所得税の税率)

たとえば、所得税の税率が10%(復興特別所得税を含めて10.21%)の人が医療費控除を20万円受けると、20万円×10%×20%=4,000円を、(90%−10.21%)で割って、上限の目安は約5,000円下がる計算です。これは総務省の式から作った計算例で、実際の額は所得や家族構成、税率の区分で変わります。

上限ぎりぎりまで寄付する人は、医療費控除の見込みも含めて上限を見積もると安全です。上限を超えた分は、控除されずに自己負担になります。

医療費控除とふるさと納税は「どっちが得」ではない

医療費控除は、支払った医療費の一部を所得から差し引く「所得控除」です。ふるさと納税は、寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から差し引かれる仕組みです。性質が違う制度なので、どちらかを選ぶものではなく、両方使えるものです。

確定申告で両方を入力するときの書類と書き方

医療費控除

  • 医療費控除の明細書: 領収書をもとに作って、申告書に添付する。医療費通知(健康保険組合などが出す「医療費のお知らせ」)を添付すると、明細書の記載を簡略化できる
  • 領収書: 添付はしないが、国税庁は、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、領収書の「提示または提出を求める場合があります」としている。5年間は保管しておく
  • マイナポータル連携: 保険診療分の医療費の情報を取り込んで自動入力できる。取り込めない医療費もあるので、領収書と照らし合わせる

ふるさと納税

  • 寄附金受領証明書: 寄付先の自治体が発行するもの
  • 寄附金控除に関する証明書: ポータルサイトなど(国税庁長官が指定した特定事業者)が発行する1年分をまとめた証明書。電子データの場合はXML形式で、PDFは使えない(国税庁「ふるさと納税に係る寄附金控除に関する証明書等について」)

第二表の住民税欄を忘れない

国税庁のNo.1155では、確定申告書第二表の「寄附金控除に関する事項」に寄付先と金額を書くとともに、「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄にも必ず記載するよう求めています。ここが書かれていないと、住民税で控除されないことがあります。

還付申告は5年間出せる

確定申告の期限は翌年3月15日ですが、所得税を払いすぎていて還付を受けるための申告(還付申告)は、国税庁のNo.2030によると「その年の翌年1月1日から5年間提出することができます」。医療費控除と寄附金控除は、どちらも還付申告の例に挙がっています。

副業の所得が20万円以下の人も、医療費控除の還付申告をするなら、その所得も含めて申告する必要があります(国税庁の質疑応答「確定申告を要しない場合の意義」)。住民税の申告との関係は、副業が20万円以下のときの住民税の申告のやり方にまとめました。

2026年分で気をつけること

2026年分(令和8年分)は、所得税の基礎控除が引き上げられ、合計所得金額489万円以下なら104万円になります(国税庁)。住民税のふるさと納税の特例分を計算するときの税率の区分は、所得税の基礎控除の額も使って決まるため(地方税法第314条の7)、上限の目安が前の年と変わる人もいます。具体的な額は、2026年分の条件に対応したシミュレーションで確かめてください。

ふるさと納税の締め切りと2026年10月の改正は、ふるさと納税は2026年10月から何が変わった?にまとめています。

うまくいかなかったこと・この記事で確かめていないこと

  • 上限が下がる幅は、総務省の式から作った計算例で、国の資料の例ではない。税率の区分が変わる人や、調整控除などの細かい計算は含めていない
  • 2026年分の基礎控除の引き上げにあわせた、住民税の特例控除の計算の調整がどう決まるかは、条文で確かめきれていない
  • 住民税の医療費控除の条文の本文は、条番号を確認しただけで読んでいない
  • セルフメディケーション税制の延長・見直しは税制改正大綱で示されているが、成立後の条文はまだ確認していない(2026年分は現行の条文で対象)
  • ふるさと納税の返礼品の課税の扱いは確認していない

まとめ

  • 医療費控除とふるさと納税は併用できる。ただし医療費控除のために確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になる
  • ワンストップ特例を申請済みでも、ふるさと納税を1年分すべて確定申告に書く。書き忘れたら更正の請求
  • 医療費控除の額は(医療費−保険金等)−10万円(総所得金額等200万円未満なら5%)、最高200万円。セルフメディケーション税制とはどちらか一方
  • 医療費控除を受けると、ふるさと納税の上限の目安は少し下がる(税率10%の人で医療費控除額の約2.5%、計算例)
  • 第二表の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄まで書く

参照した資料(2026年10月8日確認)

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