マイクロ法人と個人事業主の二刀流を1年強続けてきて、事前の想像と一番違ったのが住民税の扱いだった。二刀流の記事では契約や経理の切り分けを書いたが、税金の中でも住民税は法人側と個人側の両方で別々に発生するため、片方だけ見ていると全体像を取り違える。
先に結論を書くと、私の場合は住民税が3本立てになった。法人住民税均等割(年70,000円)、役員報酬に対する個人住民税、個人事業の所得に対する個人住民税の3つだ。しかもこの3つは、金額の決まり方も納付の時期も違う。
二刀流の住民税は3本立てになる
会社員から個人事業主になり、さらにマイクロ法人を持つ流れで進むと、住民税の発生源が段階的に増えていく。今の状態を整理すると次のとおりだ。
| 発生源 | 種別 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 法人(合同会社) | 法人住民税 均等割 | 資本金規模と自治体でほぼ機械的に決まる。年70,000円 |
| 役員報酬 | 個人住民税(給与所得分) | 役員報酬の額から計算される |
| 個人事業の所得 | 個人住民税(事業所得分) | 売上−経費の所得から計算される |
下2つは同じ「個人住民税」なので、最終的には合算されて自分あての通知書に載る。つまり納付書としては法人側1本+個人側1本の計2本だが、金額の構成要素としては3つという形になる。ここを「二刀流だから2本」と考えていると、内訳を追えなくなる。
私が最初につまずいたのはここだった。法人と個人で帳簿も口座も分けているので、税金も同じように2系統で整理できると思っていた。実際には個人側が2つの所得を抱える形になり、通知書の金額から「どちらの所得由来か」を直接読み取ることはできない。
法人住民税均等割は、赤字でも減らない
3本のうち性質がはっきり違うのが法人住民税の均等割だ。
これは利益が出ていなくても毎年必ず発生する。私の法人の場合は年70,000円で、資本金の規模と自治体によってほぼ機械的に決まる。売上がゼロでも、赤字でも、この金額は変わらない。維持費の記事でも触れたが、年間の法人固定費63万円のうち7万円がこれに当たる。
この性質は法人化の判断にそのまま効いてくる。個人事業だけなら、所得がなければ住民税の所得割も発生しない(均等割の数千円は別途かかる)。しかし法人を持った瞬間に、実績と無関係な7万円が毎年立つ。「法人を作ると節税になる」という話を先に聞いていると、この固定費が抜け落ちやすい。
私自身、設立前の試算では社会保険料の差額ばかり見ていて、均等割を計算に入れていなかった。後から気づいて、年間の維持費を洗い出し直している。法人化の損益分岐を考えるときは、節税額から均等割7万円を先に引いてから比べるのが実態に近い。
役員報酬を低く設定しても、個人住民税がゼロになるわけではない
私の役員報酬は月23,000円に設定している。社会保険料の負担を抑える設計で決めた金額だが、住民税の観点でも影響がある。
役員報酬は給与所得なので、この額に対して個人住民税がかかる。ただし月23,000円(年276,000円)という水準は給与所得控除の範囲に収まるため、役員報酬「だけ」で見れば住民税はほぼ発生しない。ここまでは設計どおりだった。
問題は、個人事業の所得が同じ個人住民税の計算に乗ってくることだ。役員報酬を低く抑えても、個人事業側で所得が出ていれば、そちらを起点に個人住民税は普通に発生する。役員報酬を低くする設計は社会保険料には効くが、住民税の総額を下げる手段ではない。
この区別は、法人化を検討している段階では特に混同しやすいと思う。私も「役員報酬を下げれば個人側の負担が全体的に軽くなる」という漠然とした理解のまま設立まで進んでしまい、後から税理士に確認して整理した。社会保険料と住民税は、同じ「役員報酬を低くする」という操作に対して効き方が違う。
納付の時期がずれることが、資金繰りに効く
金額以上に運用で効いたのが、納付時期のずれだった。
- 法人住民税均等割: 決算後の申告に合わせて納める。私の場合は決算月に紐づくので、毎年ほぼ同じ時期に7万円が法人口座から出る
- 個人住民税: 前年の所得に基づいて計算され、通知は初夏に届く。納付は年4回に分けるか一括かを選ぶ
つまり法人側と個人側で、支払いのタイミングが構造的に別になる。片方の口座に残高を寄せていると、もう片方の納付月に慌てることになる。
さらに厄介なのが、個人住民税が前年の所得で決まることだ。独立後は年ごとの所得の振れ幅が会社員時代より大きく、所得が大きかった年の翌年に、所得が小さくなっていても高い住民税が来る。私は初年度にこの感覚がつかめておらず、その年の入金ペースだけを見て資金の配分を考えていた。
対処として今やっているのは単純で、法人・個人それぞれの口座に、税金の支払い見込み分を別枠で置いておくこと。複数事業の収支を月次で見る運用に、税金の引当という費目を足した形だ。金額の精度より、口座を分けて触らないことの方が効いた。
二刀流で住民税を見るときの確認順
ここまでを、自分が次に確認するときの順番として整理しておく。
- 法人側の均等割を固定費として先に置く: 実績に関係なく毎年出る。節税効果を見積もる前にここを引く
- 個人住民税は2つの所得の合算であることを前提にする: 役員報酬分と事業所得分は最終的に合算される。役員報酬を低くしても事業所得側は残る
- 納付時期を法人・個人で別々にカレンダーへ置く: 決算月に紐づくものと、初夏の通知に紐づくものは別に管理する
- 前年の所得で決まる分を、今年の資金繰りに反映する: 所得の振れ幅が大きいほど、この時間差が効く
なお、住民税の具体的な計算や自分のケースでの扱いは、自治体の運用や年度の制度改正で変わる。私はこの整理を税理士との打ち合わせで確認しながら固めたが、金額の判断が要る場面では顧問税理士か自治体に直接確認するのが確実だ。制度の一次情報は各自治体のサイトに出ている。
まとめ
- 二刀流の住民税は3本立て(法人住民税均等割・役員報酬への個人住民税・事業所得への個人住民税)になる。納付書は2本だが、内訳は3つ
- 法人住民税均等割(年70,000円)は赤字でも発生する。法人化の損益分岐を見るときは節税額から先に引く
- 役員報酬を月23,000円に抑える設計は社会保険料には効くが、個人事業側の所得に対する住民税は別途発生する
- 法人と個人で納付時期が構造的にずれる。個人住民税は前年の所得で決まるため、所得の振れ幅が大きいほど資金繰りに効く
- 口座ごとに税金の引当を別枠で置くのが、金額の精度を上げるより実務で効いた