「副業が20万円以下なら申告はいらない」と聞いたことがある人は多いと思います。 ただ、これは所得税の確定申告の話です。住民税の申告は、20万円以下でも必要です。

では、住民税の申告はどこに、いつまでに、どうやって出せばいいのか。調べてみると、意外とまとまった情報がありません。

この記事では、地方税法の条文と、横浜市・名古屋市・大阪市・札幌市・中野区・渋谷区などの案内(2026年10月8日に確認)をもとに、次の5つを整理します。

  • 20万円以下でも住民税の申告が必要な理由
  • 期限・提出先・出し方(窓口・郵送・eLTAX)
  • 申告書の書き方の要点と、住民税の払い方の選び方
  • 申告しなかった場合の扱い
  • ふるさと納税(ワンストップ特例)との関係

この記事の結論(先に3点)

  1. 住民税には「20万円以下は不要」の線引きがない: 地方税法では、給与以外の所得が少しでもあれば住民税の申告が必要。所得税の確定申告をしない人は、市区町村に住民税の申告を出す
  2. 期限は3月15日、出し先は1月1日に住んでいた市区町村: 窓口・郵送のほか、令和8年度分からはeLTAXでマイナンバーカードを使った電子申告もできる
  3. 住民税の申告を出すと、ワンストップ特例はなかったことになる: ふるさと納税をしている人は、寄付も住民税の申告書に書く

適合する読者と限定事項

  • この記事が役立つ人
    • 副業の所得が20万円以下で、所得税の確定申告はしない会社員
    • 住民税の申告の出し方・書き方を知りたい人
  • この記事で扱わないこと
    • 副業の所得が20万円を超えて、所得税の確定申告をする人の手続き(確定申告をすれば住民税の申告は不要)
    • 各自治体の申告書の欄ごとの細かい書き方(自治体の手引きを確認してください)
  • 制度の記述は、2026年10月8日に確認した地方税法・所得税法(e-Gov法令検索)と国税庁・自治体の情報にもとづきます。取り扱いは自治体で違う部分があるため、最後は住んでいる市区町村の案内を確認してください

20万円以下でも住民税の申告が必要な理由

所得税の「20万円」は、確定申告が不要になる条件

所得税では、所得税法第121条で、次の条件にすべて当てはまる人は確定申告をしなくてよいとされています。

  • 給与の金額が2,000万円以下
  • 給与を1か所から受けていて、源泉徴収・年末調整されている
  • 給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下

いわゆる「20万円ルール」です。ただし、これは所得税だけの規定です。

住民税には、同じ規定がない

住民税の申告義務は、地方税法第317条の2に書かれています。3月15日までに、1月1日に住んでいた市区町村に申告書を出さなければならない、という規定です。

申告が不要になるのは、ただし書きで決められた人です。会社員の場合は、ざっくり言うと1月1日に会社から給与を受けていて、前の年に「給与所得以外の所得」が無かった人です。

つまり、給与以外の所得が少しでもあれば、住民税の申告は必要です。20万円以下でも同じです。横浜市のよくある質問でも、住民税は「所得の多少にかかわらず、給与所得と合算して」計算するため、所得税の確定申告をしない場合は住民税の申告が必要としています。

確定申告をすれば、住民税の申告は不要

所得税の確定申告書を出した人は、その日に住民税の申告書も出したものとみなされます(地方税法第317条の3)。確定申告書に住民税の欄があるのはこのためです。

医療費控除やふるさと納税で確定申告をする人は、住民税の申告を別に出す必要はありません。ただしその場合、20万円以下の副業の所得も確定申告書に含めて書きます(国税庁の質疑応答「確定申告を要しない場合の意義」)。

「20万円」の数え方

副業の所得がいくらかで、所得税の確定申告が必要かどうかが決まります。数え方は次のとおりです。

  • 所得で数える: 収入(売上)から必要経費を引いた額。売上50万円・経費35万円なら所得は15万円
  • 複数の副業は合算する: 事業所得・雑所得などを合計して20万円以下かどうかを見る
  • 2か所目が給与(アルバイトなど)の場合は別の基準: その給与の収入金額とほかの所得の合計で判定する(国税庁 No.1900)

20万円を超えた場合の確定申告については、副業の確定申告はいくらから必要かにまとめています。

期限・提出先・出し方

期限は3月15日

地方税法では3月15日までです。土日に当たる年は、次の開庁日が期限になります(横浜市の案内)。2026年度分(2025年の所得)は、名古屋市の案内で3月16日(月)でした。2027年度分(2026年の所得)は、2027年3月15日が月曜日です。

提出先は1月1日に住んでいた市区町村

申告する年の1月1日(賦課期日)に住んでいた市区町村に出します(地方税法第317条の2)。年明けに引っ越した場合も、1月1日の住所地です。

出し方は、窓口・郵送・eLTAX

方法 内容
窓口 市区町村の税務担当の窓口に持参する
郵送 申告書を郵送する。横浜市は郵送を勧めている
eLTAX(電子申告) 令和8年度分(2025年の所得)から、個人住民税の申告ができるようになった。マイナンバーカードが必要

横浜市は、令和8年度分(令和7年中の所得)の申告から、スマートフォン等からマイナンバーカードを使ってeLTAXで電子申告ができ、令和8年1月5日に受付を始めたと案内しています。札幌市も、マイナンバーカードを使った申告を案内し、カードが無い人は書面を郵送などで出せるとしています。

注意点が2つあります。

  • 自動計算はない: 横浜市によると、e-Taxと違って控除額の自動計算はなく、所得額や控除額は自分で計算して入力する
  • すべての市区町村で使えるかは確認する: 多くの自治体が対応を案内していますが、全国すべてで使えるという明記は見つけられませんでした。住んでいる市区町村の案内を確認してください

申告書の書き方の要点

申告書の様式は自治体ごとに違いますが、副業がある人が書く部分は共通しています。

副業の所得は「雑所得」などの欄に、収入と経費を分けて書く

ライティングや物販など、事業と言えない規模の副業は、多くの場合「雑所得(業務)」です。所得金額は「収入金額-必要経費」で、収入と経費は分けて書きます。どの欄に書くかは自治体の申告書と手引きで確認してください。

経費として認められるものの考え方は、副業で経費にできるものは何かを参考にしてください。

源泉徴収票は、自治体の指示に従う

会社の給与の分は、源泉徴収票の数字を書き写します。源泉徴収票を添付するか、提示するか、郵送なら写しを同封するかは、自治体によって案内が違います。地方税法でも、条例で源泉徴収票やその写しの提出を求められる形になっています。住んでいる市区町村の手引きの指示に従ってください。

住民税の払い方の欄(天引きか、自分で納付か)

申告書には、給与以外の所得の分の住民税を「給与から天引き(特別徴収)」にするか「自分で納付(普通徴収)」にするかを選ぶ欄があります。大阪市の申告書では「給与・公的年金等以外の所得に係る市民税・府民税の納税方法」という欄です。地方税法第321条の3でも、申告書に普通徴収の希望を書いた場合は、給与以外の所得の分を給与に上乗せしないとされています。

どちらにも印を付けなかったときの扱いは、自治体で逆になることがあります。

  • 大阪市: 記載が無ければ、給与以外の所得の分は普通徴収
  • 渋谷区: 令和7年度までは普通徴収としていたが、令和8年度以降は特別徴収

自分で納付したい場合は、必ず「自分で納付(普通徴収)」に印を付けます。普通徴収の考え方は、副業の住民税を普通徴収(自分で納付)にする方法にも書きました。

なお、「自分で納付」を選んでも、次のような場合は普通徴収にする税額が出ないため、全額が特別徴収になると中野区は案内しています。

  • 申告した所得がマイナスの場合
  • 追加した控除が、追加した所得より大きい場合
  • ふるさと納税などの税額控除が、増える住民税より大きい場合

また、2か所目が給与(アルバイトなど)の場合、その給与の住民税は普通徴収にできない扱いに変わりつつあります。中野区・渋谷区は令和8年度から、門真市は令和9年度からと案内していて、始まる年度は自治体で違います。

申告しなかった場合

法律は「条例で10万円以下の過料」を定められるとしている

地方税法第317条の5では、正当な理由がなく申告書を出さなかった人に対し、市町村は条例で10万円以下の過料を定めることができるとしています。法律が直接科すのではなく、条例に任せる形です。

すべての市区町村の条例に同じ規定があるか、実際に科された例があるかは確認できていません。「申告しないと必ず10万円」というわけではありませんが、法律上の義務であることは変わりません。

後から申告・課税されることがある

市区町村は、税務署の資料の閲覧や、関係者への質問・調査ができる権限を持っています(地方税法第325条・第298条など)。申告していない副業の所得が後から分かり、追加で課税されることはありえます。

ふるさと納税(ワンストップ特例)との関係

ここは見落としやすいところです。

地方税法附則第7条第13項第2号では、住民税の申告書(第317条の2の申告書)を出したとき、ワンストップ特例の申請はなかったものとみなすとされています。

副業の住民税の申告を出す人は、ワンストップ特例を申請していても、それが無効になります。

**ふるさと納税をしている人は、住民税の申告書に寄付金も書きます。**書き忘れると、ふるさと納税の控除を受けられなくなります。詳しくはふるさと納税は年末調整で控除できる? ワンストップ特例が無効になる落とし穴にまとめています。

なお、住民税の申告だけでは、所得税の寄附金控除は受けられません。所得税の控除も受けたい場合は、確定申告をします(この場合は20万円以下の副業の所得も含めて申告)。

会社に知られるか

「自分で納付(普通徴収)」を選ぶと、副業の所得の分の住民税は給与から天引きされません。中野区は、会社に届く通知書(特別徴収義務者用)には天引きする税額だけが書かれ、所得の内訳は載らないと説明しています。

ただし、上で書いたとおり、普通徴収を選んでも特別徴収になる例外があり、印を付けなかったときの扱いも自治体で違います。**「普通徴収にすれば会社に絶対知られない」とは言えません。**副業が就業規則で認められているかを先に確認しておくのが確実です。年末調整の書類との関係は、副業がある会社員の年末調整はどうする?に書きました。

うまくいかなかったこと・この記事で確かめていないこと

  • eLTAXで個人住民税の申告がすべての市区町村でできるかは、明記した資料を見つけられなかった
  • 不申告の過料の規定がすべての市区町村の条例にあるか、実際に科された例があるかは確認していない
  • 税務署に出された報酬の支払調書が市区町村に回り、副業の所得の把握に使われているかは、一次情報で確認できなかった
  • 2か所目の給与の住民税を普通徴収にできなくなる年度は、自治体ごとに違う。調べたのは中野区・渋谷区・門真市だけ
  • 住民税の天引き額の変化から会社が副業に気づくかどうかは、公式の説明がなく分からない

まとめ

  • 副業の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要。でも住民税には「20万円以下は不要」の線引きがなく、申告が必要(地方税法第317条の2)
  • 確定申告をすれば住民税の申告は不要(第317条の3)。その場合は20万円以下の副業の所得も含めて書く
  • 期限は3月15日(土日なら翌開庁日)、出し先は1月1日に住んでいた市区町村。窓口・郵送・eLTAX(令和8年度分から、マイナンバーカードが必要)
  • 副業の所得は収入と経費を分けて書く。住民税の払い方の欄は、自分で納付したいなら必ず印を付ける(未選択の扱いは自治体で違う)
  • 住民税の申告を出すとワンストップ特例はなかったことになる。ふるさと納税の寄付も申告書に書く

参照した資料(2026年10月8日確認)

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