副業を始めると、まず迷うのが経費の範囲だ。「副業 経費にできるもの」という検索が多いのも、判断の基準が見えにくいからだと思う。
私も最初は「これは経費で落ちるのか」を支出のたびに考えていた。ただ実際にやってみると、迷いの正体は「いくらまで使えるか」ではなく「どこまでが事業なのか」の線引きにあった。
この記事では、線引きの考え方と、あとから説明できる状態にしておく記録の残し方を書く。税額に直結する部分なので、個別の判断は最終的に税務署か税理士に確認してほしい。
経費の判断基準は「事業に必要だったか」
所得税法上、必要経費は総収入金額を得るために直接要した費用とされている。言い換えると、その支出が事業の売上につながっているかどうかが基準になる。
ここで重要なのは、金額の上限が決まっているわけではないという点だ。「副業 経費 いくらまで」で検索すると上限があるように見えるが、法律で定められた一律の枠はない。事業に必要なら金額は問わないし、必要でなければ少額でも経費にならない。
つまり判断は「いくらか」ではなく「なぜ必要か」を説明できるかどうかになる。この視点に切り替えてから、私は支出のたびに迷うことが減った。
プライベートと混ざるものは按分する
副業で厄介なのは、生活と事業で共用するものだ。自宅で作業するなら家賃も電気代も通信費も、どちらの用途にも使っている。
この場合は全額ではなく、事業で使った割合だけを経費にする。これを家事按分という。
按分の基準としてよく使われるのは次の2つだ。
- 面積 — 自宅の総面積のうち、作業スペースが占める割合
- 時間 — 1か月の総時間のうち、事業に使った時間の割合
どちらを使うかは支出の性質で決まる。家賃なら面積、通信費なら時間で按分するのが説明しやすい。
重要なのは、割合の根拠を自分で説明できることだ。「なんとなく3割」ではなく、「作業部屋が6畳で総面積が30畳だから2割」のように、計算の元になる数字を持っておく。
私が実際につまずいたのは「一貫性」だった
按分の割合そのものより、私が苦労したのは同じ性質の支出を月によって違う扱いにしてしまうことだった。
個人事業とマイクロ法人の両方を持っている状態で、どちらでも使うクラウドサービスの費用を、その場の判断で個人側に入れたり法人側に入れたりしていた。決算のときにまとめて見返して、初めてバラバラになっていることに気づいた。
金額の影響は3万円程度で大きくはなかったが、「なぜこの月だけ扱いが違うのか」を説明できないのが問題だった。確認に想定以上の時間がかかった。
副業が個人だけでも同じことが起きる。プライベートと事業の線引きを支出のたびに考えていると、判断が揺れる。
先にルールを決めて、書いておく
この反省から、私は期の初めに按分ルールを決めて文書に残すようにした。
- どの費目を按分するか
- それぞれ何を基準に(面積か時間か)
- 割合は何%で、その根拠は何か
一度決めてしまえば、支出のたびに考える必要がなくなる。判断の負荷が減るだけでなく、年度をまたいでも同じ基準で処理できる。
途中で実態が変わったら(引っ越した、作業時間が変わった)、その時点で見直して、変更した日付と理由も書いておく。これがあると、変わったこと自体は問題にならない。
証憑は「あとから説明できる形」で残す
レシートや領収書を保管するのは前提として、それが何のための支出だったかが後から分からなくなることがある。
半年前のカフェのレシートを見て、打ち合わせだったのか単に作業しただけなのかを思い出せる人は少ない。私は会計ソフトに登録するときに、摘要へ一言だけ用途を書くようにしている。
この作業は溜めるほど苦しくなる。月末にまとめて処理する運用にしているが、溜めると年度末に苦労するというのは実際に経験した(副業の収支管理はスプレッドシートと会計ソフトでに月次の手順を書いた)。
なお帳簿や書類には法定の保存期間があり、申告の種類によって年数が変わる。捨てる前に一度確認したほうがいい。
迷ったときの順番
経費かどうかで迷ったとき、私はこの順番で考えている。
- この支出は売上につながっているか → 説明できなければ経費にしない
- プライベートでも使うか → 使うなら按分する
- 按分の割合の根拠は何か → 面積・時間など数えられるものを基準にする
- 半年後に理由を説明できるか → できないなら摘要に書き足す
1で止まるものは、金額が小さくても経費にしない。逆に1をはっきり説明できるなら、金額が大きくても迷わなくていい。
経費を増やすこと自体が目的になると、判断がぶれる。売上につながる支出かどうかだけを基準にしたほうが、結果的に迷いが減った。