個人事業主・マイクロ法人経営者には育休も時短勤務もない。体調やその日の子どもの様子で使える時間が大きく変動する中で、私が仕事量を調整する際に頼っているのは「気合い」ではなく、直近の睡眠時間と可処分時間を毎日記録して数値化した「余力メーター」だ。今回は、この可視化の具体的なやり方と、それを日々の判断にどう使っているかを書く。
目次
なぜ「なんとなく頑張る」が破綻するのか
会社員であれば、体調が悪ければ有給を使う、繁忙期には時短勤務で調整するという制度上の逃げ道がある。個人事業主にはそれがない。仕事を受けるかどうか、今日どこまでタスクを進めるかは、すべて自分の裁量と自己申告で決まる。
この状態で「今日はいけそうだから頑張ろう」という感覚だけで判断していた時期があった。結果として起きたのは、子の夜泣きが続いて睡眠不足の週にクライアントワークの重い実装タスクを詰め込んでしまい、レビューで基本的なミスを何度も指摘される、という事態だった。感覚は当てにならない。睡眠不足や疲労は自覚しにくく、しかも自覚した頃には既に判断力が落ちている。
これを避けるには、感覚ではなく数字で「今の自分にどれだけ余力があるか」を先に把握し、それに応じてタスクの質を変える仕組みが要る。
余力を可視化する2つの指標
私が実際に記録しているのは次の2つだけだ。複雑な指標を増やすと続かないので、あえて絞っている。
- 前日の睡眠時間: 体組成管理で使っているのと同じ仕組みで、iPhoneのヘルスケアデータを毎朝確認する。7時間を基準線とし、6時間を切った日は「黄信号」、5時間台以下が続く日は「赤信号」とラベリングしている
- その日の子ども関連の予定リスク: 保育・学校行事、通院予定、体調不良の兆候(前日の機嫌・食欲)など、当日の可処分時間が急に削られる可能性がある要因を朝の時点で書き出す。予定が読めない日ほどリスクは高いと判断する
この2つを毎朝、手帳アプリに1行でメモする。「睡眠6h / 予定リスク中」のように書くだけで、5秒もかからない。数値化といっても大掛かりなダッシュボードは作っていない。継続できることを優先し、記録のハードルを極限まで下げているのがポイントだ。
信号ごとにタスクの質を変える
この2指標を掛け合わせて、その日に着手できるタスクの種類を事前に決めている。
- 青信号(睡眠7h以上・予定リスク低): 本業の重い実装や設計判断、複業側では新規事業の戦略検討など「考える」タスクを入れる
- 黄信号(睡眠6時間前後、または予定リスク中): 本業は納期の緩いタスクや軽微な修正に絞る。複業は普段の時間帯ごとの割り振りの中でも「考えなくてもできる」作業だけに限定する
- 赤信号(睡眠5時間台以下、または予定リスク高): 新規の判断を伴う仕事は原則入れない。本業は前日までに合意済みの範囲の実装に留め、複業は完全に止める。この日に無理に前に進めようとして、後日やり直すコストの方が高くつくと経験から学んだ
このルールを作ってから変わったのは、「今日は無理をしない」という判断に罪悪感を持たなくなったことだ。感覚で決めていた頃は、赤信号の日でも「甘えているだけでは」という不安がつきまとった。数字を先に見て機械的に判断する形にしたことで、その迷いがなくなった。
クライアントワークへの適用は限定的
正直に書くと、この仕組みが完全に機能するのは複業側のタスクに対してだけだ。本業のFDEとしてのクライアントワークには納期があり、赤信号の日だからといって成果物の提出を止められるわけではない。
ここでの実際の対応は、赤信号が事前に予測できる場合(通院予定が決まっている、など)は、その週のタスク配分を前倒しで調整し、余力のある日に重い判断を済ませておくことだ。当日いきなり赤信号になった場合は、その日の作業範囲を「合意済みの実装のみ」に絞り、新しい設計判断が必要な相談は翌営業日に回す、という運用にしている。この線引きを事前に自分の中で決めておくことが、結局は一番効いている。
まとめ
- 育休・時短のない個人事業主は、感覚ではなく数字で余力を可視化しないと判断を誤りやすい
- 記録するのは「前日の睡眠時間」と「当日の子ども関連の予定リスク」の2つだけに絞り、継続のハードルを下げている
- 青・黄・赤の3段階の信号に応じて、その日に着手できるタスクの質をあらかじめ決めている
- クライアントワークには納期があるため仕組みの適用は限定的だが、赤信号が予測できる日は事前にタスクを前倒しすることで対応している
次回は、この余力メーターを踏まえて、実際に複業4事業のタスクをどう取捨選択しているかを書く。