「子育て中にどうやって複業を始めようと思ったのか」と聞かれることがある。結論から書くと、最初から「すきま時間を使おう」と思っていたわけではない。むしろ最初の数ヶ月は、まとまった時間が取れないことを複業をやらない理由にしていた。発想が変わったのは、時間の量ではなく時間の使い方の設計を疑い始めたときだ。今回は、その発想の転換に至るまでの経緯を具体的に書く。

目次

最初は「時間がない」を理由に何も始めなかった

子が生まれてから最初にぶつかったのは、本業のFDE(企業のAI導入支援)だけで1日がほぼ埋まるという現実だった。日中はクライアントワーク、朝夕は子の身支度や送迎、夜は寝かしつけ。複業をやりたい気持ちはあったが、「まとまった時間が取れたら始めよう」と考えていた。

この考え方のまま半年近く経った。土日にまとまった時間ができる日を待っていたが、そんな日はほとんど来なかった。子が生まれる前は当たり前だった「週末に丸一日、新しいことに集中する」という時間の取り方自体が、もう自分の生活には存在しないという事実に、半年かけてようやく気づいた。

「まとまった時間」を前提にしていたことに気づいた

ここで初めて、自分が複業を「まとまった時間がないとできないもの」だと無意識に前提していたことに気づいた。この前提は、独身時代や子どもがいなかった頃の働き方をそのまま複業にも当てはめていただけで、検証したことは一度もなかった。

本業のエンジニアリングでは、タスクを小さく分解して並行で進めることは当たり前にやっている。1つの機能を作るのに8時間のまとまった時間を確保できなくても、30分単位のタスクに分解すれば、隙間時間の積み重ねで前に進められる。これは仕事だからやっていることで、なぜかプライベートの複業には同じ発想を適用していなかった。この非対称に気づいたのが、最初の転換点だった。

きっかけになった1週間の記録

前提を疑い始めてから、まず自分が実際に1日をどう使っているかを記録してみた。分析はせず、隙間ができた時刻と長さだけをメモアプリに書き留める。1週間続けてみると、次のようなことが見えてきた。

  • 朝の身支度・送迎の合間に10〜20分の隙間が1日に2〜3回発生している
  • 子が寝た後に1時間前後のまとまった時間が確保できる日が週に4〜5日ある
  • 隙間時間の合計は、1日あたり本業の稼働時間の外側だけでも1.5〜2時間ほどあった

このとき衝撃を受けたのは、隙間時間の「合計」がゼロではなく、むしろ思っていたより多かったことだ。「時間がない」と感じていたのは、時間の絶対量が足りないからではなく、細切れの時間を「使えない時間」として扱っていたからだった。1時間のまとまった時間を待っている限り、その間にある無数の10分・20分は存在しないものとして切り捨てられていた。

「細切れ時間には向かない」を疑う

記録を取った後、次に疑ったのは「複業は細切れ時間には向かない」という思い込みそのものだった。この思い込みも検証していなかった。

改めて考えると、これは「複業=1つのまとまった作業」という前提があるから成り立つ話で、複業を複数のタスクの集合として捉え直せば、細切れ時間で完結するタスクは実は多い。市場のリサーチ、情報収集、単純な確認作業——これらは10分でも成立する。逆に、企画を練る・構成を考えるといった作業は、まとまった時間でなければ着手できない。

つまり「複業が細切れ時間に向かない」のではなく、「複業の中には細切れ時間向きのタスクと、まとまった時間向きのタスクが混在している」というだけだった。この区別に気づいた時点で、「まとまった時間がないから複業ができない」という最初の結論は崩れた。まとまった時間がなくても、細切れ時間向きのタスクから始めればいい、というだけの話だった。

発想が変わった後、最初に試したこと

発想が変わってから最初にやったのは、大きな決断ではなく小さな実験だった。朝の身支度の合間の10分で、複業候補のリサーチを1つだけ進めてみる。それだけを1週間続けた。

結果として、「10分でも前に進む」という実感が持てたことが一番大きかった。それまでは「まとまった時間ができるまで何も進まない」状態だったが、細切れ時間でも前進する感覚を一度持てると、複業を始めるハードルが一気に下がった。ここから、細切れ時間向きのタスクとまとまった時間向きのタスクを事業ごとに仕分ける、という今の運用につながっていった(この時間配分の具体的なやり方は別記事に譲る)。

まとめ

  • 最初は「まとまった時間が取れたら複業を始めよう」と考え、半年近く何も始めなかった
  • 独身時代の「まとまった時間前提」の働き方を無意識に複業にも当てはめていたことに気づいたのが転換点
  • 1週間、隙間時間の時刻と長さだけを記録したところ、細切れ時間の合計は思っていたより多いとわかった
  • 「複業は細切れ時間に向かない」のではなく、複業の中に細切れ時間向きのタスクとまとまった時間向きのタスクが混在しているだけだと気づいた

次回は、この発想を踏まえて、複業を始める最初の一歩をどう踏み出したかを具体的に書く。

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