マイクロ法人運用シリーズの続き。今回は「節税策をどこまでやるか」という、法人を持つと必ずぶつかる問いについて書く。

先に結論を書くと、私は節税額の大小ではなく「その手間を今のすきま時間の配分の中でずっと続けられるか」を最優先の判断軸にしている。理論上有利な節税策でも、運用が続かなければ意味がないというのが、Nogawa L.prince合同会社を1年強運営してきた実感だ。これはあくまで自分の事業構成と時間配分における判断であり、一般的な節税アドバイスではないことを先に断っておく。

節税策は「知っているか」ではなく「続けられるか」で決まる

法人を持つと、節税の選択肢は個人事業の頃より格段に増える。役員報酬の設定、小規模企業共済、経営セーフティ共済、法人契約の保険、旅費規程による日当、社宅制度など、調べれば調べるほど候補が出てくる。

私も設立当初、こうした制度を一通り調べた。だが実際に採用するかどうかを決める段になって気づいたのは、「制度として有利かどうか」と「自分が運用し続けられるかどうか」は別問題だということだ。すきま時間で本業・複業4事業・子育てを回している以上、節税策は一度設定して終わりではなく、記帳や書類整備、年ごとの見直しという継続的な作業を伴う。この継続コストを見落として制度だけで選ぶと、初年度はできても翌年以降が回らなくなる。

実際に採用した基準は「単発の手続き」か「継続的な管理」か

私が節税策を採否判断する際に使っているのは、その施策が「単発の手続きで完結するか」「継続的な管理を必要とするか」という軸だ。

  • 単発で完結する施策: 一度設定すればあとは自動的に処理される、もしくは年1回の見直しで済むもの。役員報酬の年額決定や、小規模企業共済の掛金設定はここに入る。設定後は経理側で淡々と処理されるため、すきま時間の圧迫が小さい
  • 継続的な管理を必要とする施策: 毎月・毎回の判断や証憑整理が発生するもの。旅費規程の日当運用や、細かい経費区分の作り込みなどが該当する。節税効果自体はあっても、判断の発生頻度が高く、すきま時間に差し込みにくい

「マイクロ法人運営で発生した『地味に手間だったこと』」でも書いた通り、私にとって一番負荷が高いのは登記や決算のようなイベント的な手続きではなく、日々発生する細かい判断の積み重ねだ。節税策も同じ構造を持っていて、節税額が大きくても判断頻度が高い施策は、結果的に自分の生活の中で「続かない施策」になりやすいと分かった。

節税額を「時給換算」して比較する

もう1つ実践しているのが、節税額をそのまま見るのではなく、その施策の運用にかかる時間で割って時給換算することだ。

例えば、ある施策で年間の節税額が6万円、運用に必要な作業が月1時間だとすると、年間12時間の作業で6万円の節税、時給換算で5,000円という計算になる。この数字を、自分の本業の時間単価や、その時間を複業や子育てに回した場合の機会損失と比較する。

この時給換算をやってみると、「制度としては有利」と紹介される施策の中にも、自分の時間配分では割に合わないものがあることが分かった。逆に、節税額自体はそれほど大きくなくても、一度設定すればほぼ手間がかからない施策は、時給換算では明らかに有利になる。この比較を通してから採否を決めるようにしてから、節税策選びで後悔することが減った。

「やらない」も選択肢にする

節税策の検討で意識しているもう1点は、「やらない」ことを積極的な選択肢として扱うことだ。

法人を持つと、周囲や情報発信されている内容から「節税できるのにやらないのはもったいない」という空気を感じやすい。だが私の場合、本業・複業4事業・子育てという複数の役割を同時に回している以上、すきま時間という制約が最初にあり、節税はその制約の中でできる範囲でやるものだと位置づけている。制約を無視して節税策を積み上げると、経理や書類整備に割く時間が増え、結果的に本業や複業に使う時間、子育ての時間を削ることになりかねない。

実際、検討した施策の中には、節税効果を理解した上であえて採用しなかったものが複数ある。効果が小さいからではなく、継続運用にかかる手間が、今の自分の時間配分では見合わないと判断したからだ。この「やらない」判断も、節税を検討した結果としてきちんと記録に残すようにしている。

まとめ

  • 節税策の採否は節税額の大小ではなく「今のすきま時間の配分で続けられるか」を最優先の判断軸にしている
  • 判断基準は「単発の手続きで完結するか」「継続的な管理を必要とするか」の2種類に施策を分類すること
  • 節税額を運用時間で時給換算し、本業の時間単価や機会損失と比較してから採否を決めている
  • 「やらない」ことも積極的な選択肢として扱い、あえて採用しなかった施策も判断として記録している

次回は、実際にすきま時間の中で経理・記帳の作業をどう仕組み化しているか、具体的な運用フローについて書く予定だ。

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