このブログでマイクロ法人運用シリーズを書き続けていると、必ず突き当たる問いがある。役員報酬、資産状況、取引先、子どもの状況——どこまで書いて、どこから伏せるのかという線引きだ。今回はこのブログの記事そのものを題材に、私がどういう基準で公開範囲を決めているかを書く。

先に結論を書くと、私が使っている基準は「金額」「相手」「子ども」の3つのレイヤーで別々のルールを持つ、というものだ。1本の統一ルールで全部を判断しようとすると必ずどこかで無理が出るので、レイヤーごとに違う理由で線を引いている。今回はその中身と、実際に手を動かしている仕組みを書く。

なぜ「1つの基準」では足りないのか

最初は「個人が特定される情報は伏せる」という単一ルールで運用しようとしていた。だが書き続けるうちに、これだけでは判断できない場面が次々に出てきた。

例えば役員報酬の金額は、私個人が特定される情報ではない。私の場合は月額23,000円で、このブログでも実額で書いている。ただし扱いには注意が要る。「特定されるから」ではなく、「税務・法律に関わる数字を実額だけ出すと、読者がそれを一般解として受け取りかねない」からだ。一方で子どもの情報は、特定されるかどうか以前に、そもそも本人の同意を取れない情報を公開の材料にすること自体を避けている。

この2つは似ているようで、気をつける理由が全く違う。前者は「誤読リスク」の問題で、後者は「同意できない人の情報を扱っている」という問題だ。理由が違えば、運用のルールも変わってくる。前者は書き方を工夫すれば出せるが、後者は書き方を工夫しても出さない。だから私は、対象ごとにレイヤーを分けて考えることにした。

レイヤー1: 金額は実額と判断プロセスをセットで書く

役員報酬、法人の維持費、FIREの目標額——数字が絡むものは、実額を書く。そのうえで、その数字に至った判断のプロセスと前提条件を必ず同じ記事に書く。数字だけを単独で出すことはしない。

これには実務上の理由がある。「役員報酬をいくらにしたか」という実額だけを出すと、読者が「この金額を真似れば良い」と誤読しやすい。かといって数字を伏せると、判断プロセスを書いても読者が自分の状況と比べる手がかりがなくなる。実額があるから「自分の場合は前提のどこが違うか」を確かめられ、判断プロセスがあるから「その違いで結論がどう変わるか」を考えられる。2つが揃って初めて、再現性のある情報になると考えている。

このブログで役員報酬の月額23,000円を書くときは、法人が払える上限・家計に必要な下限・社会保険料込みの再計算という決め方の手順と、期中に変えられない前提を必ず添えている(役員報酬の記事)。例外は、案件ごとの単価や取引額のように、取引先の推測につながる数字だ。これはレイヤー2の基準で扱い、金額としては出さない(単価の決め方の記事も、金額ではなく見積もりの考え方だけを書いている)。

レイヤー2: 取引先・案件は「合成して抽象化」、事業構造は実名

FDEのクライアントワークや、複業側の具体的な取引先名は一切書かない。これは守秘義務という明確な契約上の制約があるので、判断に迷う余地はほぼない。

ただし、複数案件を合成して抽象化する際に気をつけていることが1つある。それは「特定の1案件の話に見えないよう、必ず複数の経験を混ぜる」ことだ。1つの案件だけを抽象化して書くと、業界の特徴や規模感からクライアントが推測できてしまう場合がある。似た性質の案件を2〜3件分まとめて1つのエピソードとして書くことで、個別の案件を特定できない形にしている。

一方で、storeforge、aerial-earth-studio、afflow、民泊という複業の名前や、Nogawa L.prince合同会社という法人名、どの事業を法人に載せてどの事業を個人事業に残したかという構造は、すべて実名・実態で書いている。ここを伏せると「複業ログ」「マイクロ法人運用」という柱そのものが成立しなくなるからだ。事業の構造は公開の対象、個別の取引先は非公開の対象、という線引きをしている。

レイヤー3: 子どもの情報は「存在の言及」までで止める

子どもについては、このブログ全体を通して最も厳格なルールを敷いている。人数は書くが、年齢は「未就学児」「小学生」といった大まかな帯までしか書かない。名前、園や学校の名前、生年月日につながる情報は一切出さない。

このルールの理由は、他のレイヤーとは根本的に違う。金額や取引先は「私自身の情報をどこまで開示するか」という私の裁量の範囲内の話だが、子どもの情報は「本人が公開に同意していない他者の情報を、私が代わりに公開している」という構図になる。ここは裁量の対象ではなく、そもそも扱う情報の性質が違うと考えている。

実務上は、記事を書き終えた後に必ず「子どもに関する記述」を検索して見直す工程を入れている。「子育てと複業」の柱では特に、時間設計の話をしていると無意識に固有の情報(習い事の頻度、園の行事の詳細など)が紛れ込みやすい。書いた直後の自分は気づきにくいので、投稿前のチェック工程として独立させているのが実務上のポイントだ。

判断に迷ったときの実務チェックリスト

3つのレイヤーに整理しても、個別の記述で迷う場面は当然ある。そういうときに私が実際に使っている問いは次の4つだ。

  1. この数字・固有名詞に、判断の手順と前提条件を添えられているか。添えられないなら「真似すればいい」という誤読を誘発するだけではないか(レイヤー1判定用)
  2. この記述から、特定の企業・個人が1つに絞り込めるか(レイヤー2判定用。合成前の生の記憶をそのまま書いていないか確認する)
  3. この情報は、本人(特に子ども)が将来「公開してほしくなかった」と思う可能性があるか(レイヤー3判定用。迷ったら書かない側に倒す)
  4. この記事が今の柱の趣旨(複業ログ/エンジニアリング実践/子育てと複業/FIRE/マイクロ法人運用)から外れて、単なる自慢や愚痴になっていないか

この4つを通していない記事は、下書き段階で止めて書き直す。特に4番目は数字や固有名詞の問題ではなく文章の温度の問題だが、公開判断の一部として毎回チェックしている。

まとめ

  • 公開範囲の判断は「1つの統一ルール」ではなく、金額・取引先・子どもという3つのレイヤーで別々の理由に基づいて線を引いている
  • 金額は実額で書き、判断プロセスと前提条件を必ずセットにする。数字だけを単独で出すと誤読を招き、伏せると読者が自分の状況と比べられないため
  • 取引先・案件は守秘義務に基づき複数案件を合成して抽象化し、事業構造そのものは実名で書くという線引きをしている
  • 子どもの情報は裁量の対象ではなく「本人が同意できない他者の情報」として、他のレイヤーより厳格に、投稿前の見直し工程まで独立させて運用している

次回は、マイクロ法人の決算・確定申告の年間スケジュールを、すきま時間の中でどう組み込んでいるか、実際の年間の動き方を書く予定だ。

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