複業を複数並行していると、必ず「これは続けるべきか、畳むべきか」を判断する場面に当たる。今回はその判断をどういう基準でやっているかを書く。
先に結論を書くと、私は「儲かっているかどうか」だけでは畳む判断をしていない。見ているのは、投じている時間に対して検証が前に進んでいるかどうかと、その事業を続けることが他の事業の時間を奪っていないかの2点だ。この2つが両方とも崩れたときに、初めて撤退を検討する。
「儲かっていない」は畳む理由にならない
複業4事業(storeforge、aerial-earth-studio、afflow、民泊)のうち、現時点でしっかり黒字化しているものはまだ少ない。0→1のフェーズにある事業がほとんどで、売上だけを見れば「畳んだ方がいい」と言えそうな状態のものもある。
それでも私は、赤字や低収益そのものを畳む理由にはしていない。理由は単純で、複業はどれも「まず市場ニーズがあるかを検証する」フェーズから始めているからだ。検証段階の事業を売上だけで評価すると、正しく撤退すべきものと、まだ検証途中で判断が早すぎるものの区別がつかなくなる。売上はあくまで検証の結果の1つであって、判断の唯一の材料にはしていない。
見ているのは「検証が前に進んでいるか」
売上の代わりに私が見ているのは、その事業で「次に確かめるべき問い」が更新され続けているかどうかだ。
例えば、ある事業を数週間動かしてみて、当初立てていた仮説(このターゲットに需要がある、このチャネルで人が集まる、など)に対して、White/Blackがはっきりする結果が出ていれば、それは検証が前に進んでいる状態だ。結果が良くても悪くても、次にやるべきことが具体的に見えていれば続ける価値があると判断している。
逆に危険信号だと思っているのは、同じ作業を繰り返しているのに、仮説に対する答えが一向に出ない状態だ。これは「まだ足りないから続ける」のか「そもそも筋が悪いから何をやっても答えが出ない」のかの見極めが必要になる。私の場合、目安として次のようなチェックを自分に課している。
- 直近の作業ログを見返して、先週と今週で「わかったこと」が増えているか
- 増えていない場合、それは検証方法が悪いのか、そもそも仮説が悪いのか切り分けられているか
- 切り分けた上で、次の一手を変えても同じ停滞が続くと予想されるか
3つ目の問いに「はい」と答えるようになったとき、私はその事業を畳む方向に倒す。時間をかければいつか答えが出るという期待だけで続けている状態は、検証ではなく惰性だと考えているからだ。
もう1つの軸——他の事業の時間を奪っていないか
複数事業を並行している以上、ある事業を続けることのコストは、その事業単体の収支だけでは測れない。すきま時間という限られたリソースを、その事業がどれだけ占有しているかも同じ重みで見ている。
具体的には、ある事業に割く時間が増えた結果、他の事業のタスクが軒並み後回しになり続けている状態が数週間続いたら、それは黄色信号だと捉えている。「1本足打法をやめた理由」で書いた通り、私が複数事業を並行しているのは1つの賭けに時間を全振りするリスクを避けるためだ。ある事業が結果的に他の全部の時間を食い潰しているなら、それは並行運用の前提が崩れているサインでもある。
このとき畳む対象になるのは、必ずしも一番成果が出ていない事業とは限らない。「時間対効果が一番悪い事業」を優先的に見直す、というのが実際の運用に近い。伸びている事業でも、投じている時間に対するリターンが他の事業より明確に劣っていれば、縮小や撤退の検討対象に上げている。
実際に判断を先送りにした失敗
正直に書くと、この基準を持っていても判断が遅れたことはある。ある事業で「わかったこと」が数週間増えていない状態に気づいていながら、これまで投じた時間がもったいないという感覚(いわゆるサンクコスト)が働き、判断を先送りにしたことがあった。
結果として、その先送りの数週間で他の事業のタスクがさらに積み上がり、後から振り返ると「もっと早く見切りをつけていれば、その時間を別の事業の検証に使えていた」という反省が残った。この経験があってから、「わかったことが増えているか」のチェックを週次のタスク管理の中に明示的に組み込むようにしている。感覚だけで判断すると、サンクコストに引っ張られて先送りしがちだという自覚があるからだ。
まとめ
- 赤字・低収益そのものは畳む理由にしていない。検証段階の事業は売上だけで評価できないため
- 見ているのは「わかったことが増え続けているか」。停滞が続き、次の一手を変えても同じ停滞が予想されるなら撤退を検討する
- 事業単体の収支だけでなく、他の事業の時間をどれだけ奪っているかも同じ重みで判断材料にしている
- サンクコストに引っ張られて判断を先送りした経験があり、今は「わかったことの増減」を週次で明示的にチェックする運用に変えた
次回は、複業4事業それぞれの現在地と、直近で見えてきた仮説検証の結果を個別に書いていく。