FIREへの軌跡をここまで何本か書いてきたが、順調に積み上がってきた話ばかりではない。実際には、計画そのものを投げ出しかけた時期が一度あった。今回はその挫折の中身と、そこからどう立て直したかを、格好つけずに記録する。先に結論を書くと、挫折の原因は資産が増えなかったことではなく、「進捗を測る物差しを1つに絞りすぎたこと」だった。

何が起きたか——数字が動かない月が続いた

複業4事業(storeforge・aerial-earth-studio・afflow・民泊)を並行して立ち上げているフェーズでは、当然どの事業も投資が先行する。広告費、機材、初期在庫、物件関連の支出——これらは資産トラッキングの月次記録の上では、すべて「資産の目減り」として同じ列に並ぶ。

ある時期、この目減りが3ヶ月ほど連続した。複業側の投資が重なった月と、想定していなかった支出が重なった月が続き、月次で記録している総資産額が横ばい、むしろ微減という状態が続いた。[進捗トラッキングの仕組み]で毎月数字を見ているからこそ、この停滞がはっきり可視化されてしまった。

このとき自分の中で起きたのは、「複業に時間を使っているのに、FIREの物差しである資産額はむしろ減っている」という感覚だった。頭では複業が投資フェーズにあることを理解していたはずなのに、毎月見る数字が減り続けると、理屈より先に気持ちが萎えた。「このペースで本当にFIREにたどり着くのか」という疑いが、日々のすきま時間の使い方にも影響し始めた。作業に取りかかる前に「これをやって意味があるのか」と考える時間が増え、結果として複業に使う時間の密度自体が落ちるという悪循環に入りかけた。

挫折の正体は「資産額という単一指標」への依存だった

立ち止まって原因を分解してみると、資産が減っていたこと自体が問題ではなかった。問題は、自分がFIREの進捗を「総資産額」というたった1つの数字でしか見ていなかったことだった。

以前の記事で、FIREを「支出・時間・意思決定の自由度を広げるプロセス」として定義したと書いた。にもかかわらず、日々の進捗確認では、その定義を忘れて資産額の増減だけを見ていた。資産額は複業の投資フェーズでは一時的にマイナスに振れて当然の指標であり、そこだけを見ていれば停滞しているように映るのは構造上当たり前だった。それなのに、その1つの数字に一喜一憂する状態に自分を置いてしまっていたのが、挫折しかけた本当の原因だ。

もう一つ気づいたのは、資産額という指標は「複業への投資」と「浪費」を区別してくれないということだ。[支出管理の記事]で、削った費目と削らなかった費目を分けたときの判断軸は「削ると自分の状況判断の前提が崩れるかどうか」だった。複業への投資も同じ軸で見れば、削るべきものではなく、むしろ将来の収入の伸びを作るための支出のはずだった。それを資産額という単一の数字で測ると、浪費も複業投資も区別なく「減った」としか表示されない。この物差しの粗さが、実態以上に自分を焦らせていた。

立て直しに使った3つの行動

ここから立て直すために、実際にやったことは次の3つだ。

  1. 資産額とは別に「複業への投資額」を切り出して記録する: 月次の増減内訳メモに、複業4事業への投資額を独立した項目として書き出すようにした。これにより、「資産が減った」ではなく「今月は複業に5万円投資し、その結果資産の見た目が5万円減った」という形で分解できるようになった。数字自体は変わらないが、意味づけが変わると焦りの質が変わった
  2. 月次だけでなく四半期の複業収益トレンドも並べて見る: 単月では投資超過に見えても、3ヶ月単位で見ると複業の月商が緩やかに増えている事業もあった。時間軸を単月から四半期に伸ばすだけで、「停滞」に見えていたものが「投資フェーズの途中経過」に見え方が変わった
  3. 「資産額」以外の進捗指標を1つ追加した: 複業4事業合計の月間利益が生活費の何割をカバーしているかという比率を、資産額と並べて記録するようにした。この比率は投資が先行する月でも資産額ほど大きくは動かないため、資産額が沈んでいる月でも「別の指標は前に進んでいる」ことを確認できる支えになった

この3つに共通しているのは、指標を増やしたことであって、資産額そのものの見方を変えたわけではない点だ。むしろ「資産額だけを見て一喜一憂する状態」から距離を置くために、あえて見る数字の種類を増やした。

挫折しかけて分かったこと

この時期を経て分かったのは、挫折の引き金は数字の悪化そのものより、「今の数字の悪化が構造的に想定内なのか、それとも本当に計画から外れているのか」を判断する材料を自分が持っていなかったことだった。判断材料がないまま数字だけを見ると、一時的な投資フェーズも失敗のシグナルも同じに見えてしまう。

もう一つ、資産形成のペースを追う記事を書きながら実感していたのは、進捗トラッキングの仕組みそのものが、時に自分を追い詰める道具にもなり得るということだ。仕組み化して可視化すること自体は間違っていないが、見る指標が単一だと、可視化が焦りを増幅させる方向に働くこともある。指標の設計は「見える化すればいい」で終わらせず、「何と何を並べて見るか」まで含めて考える必要があると学んだ。

まとめ

  • 複業4事業への投資が重なり資産額が3ヶ月ほど横ばい・微減となった時期に、計画を投げ出しかけた
  • 挫折の原因は資産減少そのものではなく、進捗を「総資産額」という単一指標だけで見ていたこと
  • 立て直しに使ったのは、複業投資額の切り出し記録、四半期単位でのトレンド確認、生活費カバー率という別指標の追加という3つの行動
  • 進捗の可視化は焦りを増幅させることもあるため、単一指標に頼らず複数の物差しを並べて見る設計が必要だと学んだ

次回は、この経験を踏まえて見直した資産形成の目標設定そのものについて書く。

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