複業(storeforge・aerial-earth-studio・afflow・民泊)と、本業の個人事業、そしてマイクロ法人(Nogawa L.prince合同会社)。今回は、これだけの数の「お財布」が並存する状態で、日々の会計処理をどう破綻させずに回しているかを書く。
先に結論を書くと、私がやっているのは複雑な会計ソフトの機能を使いこなすことではない。むしろ逆で、「入り口(ドメイン・契約名義)の時点で所属を固定する」「記帳の単位を事業ごとに揃える」という、地味なルールを先に決めておくことで、後工程の判断コストを減らす方向に倒している。
なぜ「事業ごとに財布が違う」だけでは足りないのか
複業を始めた当初、私も「事業ごとに口座やカードを分ければ会計は整理される」と考えていた。実際、口座やカードを分けること自体は今も基本方針にしている。ただ、それだけでは足りない場面がすぐに出てきた。
理由は、1つの事業の中でも「誰の名義で契約するか」が一枚岩ではないからだ。例えばドメインやサブスクリプション型のツールは、法人設立前に個人名義で契約したものが複業側に残っていたり、逆に法人設立後も個人の与信の方が通りやすいサービスがあったりする。口座を分けるという「出口」のルールだけでは、この「入り口」のねじれを吸収しきれない。
そこで私は、口座分離とは別に、契約が発生するタイミングで「これはどの主体の名義にするか」を先に決め切る運用に切り替えた。
ドメイン・契約名義を先に固定する
具体的にやっているのは、新しいサービスを契約する前に、次の順番で判断することだ。
- その契約は誰と誰の間の取引か: 相手が個人向けの取引を前提としたサービスなら個人事業(または個人)、法人としての実体を求められる取引(請求書の宛名指定がある、契約書に法人番号の記載が必要など)なら法人、という基準で先に決める
- 一度決めた名義は、事業をまたいでも変えない: 例えば法人名義で取得したドメインは、後からその事業を個人事業側の管理に戻すことになっても、ドメインの契約名義自体は変えない。名義変更の手続きコストの方が、多少の管理上の不整合より高くつくと判断しているためだ
- 迷ったら個人事業側に置く: 法人側に寄せすぎると、法人の決算処理が煩雑になる。判断に時間がかかりそうな契約は、いったん個人事業側に置いて、後で明確に法人化すべき理由が出てきたときに移す
この「先に決め切って、後から動かさない」というルールを作ったことで、契約のたびに毎回悩む状態からは抜け出せた。実際には、それでも月に数回は「これどっちだっけ」と確認し直す場面が発生している。ゼロにはならないが、ルールがない状態に比べれば判断の回数は明らかに減った。
記帳の単位を「事業」で揃える
もう1つ工夫しているのが、記帳(会計ソフトへの入力)の粒度を、口座やカードの単位ではなく事業の単位で揃えることだ。
法人の会計は法人名義の口座・カードの取引を追えば基本的に足りる。問題は個人事業側で、本業(FDE)と複業のうち法人に載せていない事業(現時点ではstoreforge・aerial-earth-studio・afflow・民泊のうち一部)が、同じ個人名義の口座・カードに混在している。
これを口座の取引履歴の順番のまま記帳すると、後から「この支出はどの事業のものだったか」を思い出すコストが発生する。そこで私は、会計ソフトの補助科目(またはタグ機能)に必ず事業名を入れることをルール化した。
- 支出が発生した時点、遅くともその週のうちに事業タグを付けて記帳する
- タグを付けられない・判断に迷う支出は「未分類」タグを付けたうえで放置せず、月次の棚卸しで必ず解消する
- 事業をまたぐ共通経費(例えばクラウドサービスの契約を複数事業で使い回している場合など)は、按分せず「按分不要と判断した理由」だけメモに残し、都度悩まない
按分をきっちりやろうとすると際限なく時間を吸われることが分かってきたので、金額的な重要性が低いものは「按分しない」という判断を先に決め、その判断根拠だけ記録に残す方式に変えた。これも「入り口で決め切る」の応用形だ。
実際に崩れた場面と、そこから直したこと
正直に書くと、この仕組みも最初から今の形だったわけではない。法人設立の直後、法人用のクレジットカードの発行が完了する前に個人名義のカードで法人経費を立て替えた期間があり、その分の経費を後からまとめて法人側に付け替える処理が発生した。
このとき困ったのは、立て替えた支出のレシート・明細を「後でまとめて処理すればいい」と先送りにしていたため、いざ付け替えようとしたときに何がどの事業の支出だったか、記憶を頼りに掘り起こす羽目になったことだ。これがきっかけで、「記帳は発生から1週間以内」というルールを明文化した。証憑をためればためるほど、後で事業を切り分けるコストが指数的に増えることを、身をもって学んだ形だ。
まとめ
- 口座・カードを事業ごとに分けるだけでは、契約名義のねじれ(法人設立前後の混在など)は解消しない
- ドメインや契約は「誰と誰の取引か」を基準に、契約時点で名義を決め切り、後から動かさない
- 記帳は口座単位ではなく事業単位のタグで揃え、按分に迷う支出は「按分しない理由」を記録して都度悩むのをやめる
- 証憑を先送りするほど後工程のコストが増える。記帳は発生から1週間以内というルールで、この失敗を仕組みで防いでいる
次回は、複数事業を並行運営する中で、実際に確定申告・決算のシーズンにどれくらいの作業時間がかかっているかを実況する予定だ。