マイクロ法人運用の記事として、今回は「設立してよかったこと」ではなく、地味に手間だったことを記録しておく。
先に結論を書くと、Nogawa L.prince合同会社を運営していて一番時間を取られているのは、登記や決算のような「イベント的な手続き」ではない。むしろ、口座・カード・契約書の名義を法人と個人で使い分ける、その都度の判断と作業だ。1回あたりは数分〜数十分の作業でも、頻度が高く、しかもすきま時間に差し込みにくいタイプの手間が積み重なっている。今回はその中身を具体的に書く。
目次
「どっちの財布で払うか」の判断が毎回発生する
法人化して一番想定外だったのは、支払いのたびに「これは法人の経費か、個人の支出か」を判断するコストだ。
個人事業だけだった頃は、事業用の口座とプライベートの口座を分けてはいたが、判断に迷うことはあまりなかった。ところが法人と個人事業の二刀流になってからは、経費として計上できる範囲・按分の考え方が事業体ごとに違うため、1つの支払いのたびに「これは法人の口座から払うべきか、個人事業の口座か、それとも完全にプライベートか」を都度考える必要が出てきた。
例えば複業のツール費用や書籍代のようなものは、法人に紐づく事業なのか個人事業に紐づく事業なのかで支払い元を変えている。金額としては数百円〜数千円程度の小さな支払いが多いのだが、判断そのものに毎回数分かかる。この「小さいが頻度が高い判断」は、決算のような年1回のイベントよりも体感の負荷が大きい。
対処として自分の場合は、事業ごとに使う口座・カードをあらかじめ固定するルールを作り、判断ではなく「どの財布から払うかは事業が決まった時点で機械的に決まる」状態に寄せた。それでも新しい支払いパターンが出てくるたびにルールの穴が見つかるので、完全になくなったわけではない。
契約書・請求書の「宛名」を毎回確認する手間
複業4事業と本業を並行していると、契約や請求のやり取りが法人名義なのか個人事業名義なのかを、書類が来るたびに確認する作業が発生する。
具体的には、取引先から届く請求書や契約書のドラフトに、想定していた名義と違う名義が入っていることが何度かあった。悪意があるわけではなく、単に相手側が「フリーランスは基本個人名義だろう」という前提で書類を作ってくるケースが多いためだ。これに気づかずそのまま処理すると、後で経費の帰属を修正する手間が発生する。
そのため自分の場合は、新しい契約や請求書が来た際に、宛名を確認するチェックを1ステップ必ず挟むようにしている。地味だが、これを飛ばすと後工程(記帳・決算)でのやり直しコストの方がずっと大きくなることを、何度か痛い目を見て学んだ。
「誰が代表者か」を証明する書類を何度も出す
マイクロ法人特有の手間として、代表者である自分自身の本人確認・資格証明を求められる場面が、個人事業のときより明らかに増えた。
法人口座の開設、法人カードの申込、取引先との与信確認など、法人として何か新しいことを始めるたびに、登記簿謄本や印鑑証明のような書類の提出を求められる。個人事業であれば自分の本人確認書類だけで済んでいたものが、法人になると「法人の実在証明」と「代表者が自分であることの証明」の2段階になる。
書類自体は取得すればいいだけなのだが、取得には法務局や役所に出向く、あるいはオンライン申請の手続きを踏む必要があり、思い立った瞬間にすきま時間で終わらせられる作業ではない。自分の場合は、登記簿謄本や印鑑証明書は使う予定がなくても数か月に1回まとめて取得し、手元にストックしておく運用に切り替えた。都度取りに行く手間を、まとめて先出しする形に変えたことで、必要になった瞬間に動けなくなるリスクは減らせている。
帳簿の「事業ごとの切り分け」が地味に重い
複業を4事業並行している都合上、法人内でも「どの事業の売上・経費か」を記帳の段階で切り分けておく必要がある。
法人としての決算は1つにまとまるが、自分自身が各事業の採算を把握するためには、法人内の取引を事業ごとにタグ付けして管理しないと、後から「storeforgeは今どれくらいのコストがかかっているのか」といった問いに答えられなくなる。この切り分け作業は税務上必須ではないが、経営判断のためには実質必須で、結局は自分でルールを決めて運用するしかなかった。
現状はスプレッドシートで事業ラベルを手動で付けて管理しているが、取引件数が増えるとこの手動タグ付けの負荷も上がっていくはずで、いずれ仕組み化が必要になると感じている。
まとめ
- マイクロ法人運営で最も負荷が高いのは、登記・決算のようなイベント的手続きより「法人か個人か」を都度判断する細かい支払い作業だった
- 契約書・請求書の宛名確認を1ステップ挟むルールにしないと、後工程での修正コストが膨らむ
- 代表者証明書類(登記簿謄本・印鑑証明)は都度取得ではなく、数か月に1回まとめて先出しでストックする運用に変えた
- 法人内の事業ごとの帳簿切り分けは税務上必須ではないが、経営判断のためには実質必須で、現状は手動運用のまま
次回は、この地味な手間の一部をどう仕組み化・自動化しているか、実際に組んでいる管理の型について書く予定だ。